2017.01.20

屋久島の「先島丸」と船葬

屋久島のお墓には、墓石に葬る前に一時的にお骨を安置する小さな小屋型の「魂屋」がおかれる。その壁にはかつて先島丸という船が描かれるものだった。

屋久島の民話には、たくさんの先島丸が集まっているところに迷い込んでしまった恐怖を語るものがある。1つは志戸子の泊川の浦、1つは奥岳にある御船岳で、先島丸は死者を乗せて旅立つものであり、つまりそのイメージは死後の世界を意味する。死後の世界が海にあったり、船の浮かぶ水面なのに山上異界になっていたり、複雑なことになっているが、いずれにしても、屋久島には船葬であの世に行くという死生観があったのは間違いない。

ところが弥生時代や古墳時代の遺跡には、実際に船葬が行われていたことを示すものがある。
福岡県筑紫野市の五郎山遺跡には、棺を乗せた船が来世の世界を目指す壁画があり、また奈良の巣山遺跡では実際に埋葬に使われた全長8mの船が発掘された。

さらに、天皇家では納棺のことを「お舟入り」と呼ぶのだそうだ。

これが西日本で一般性のある事実なら、屋久島の先島丸は、弥生時代まで遡る可能性があるということになるだろう。

2015.09.23

ヤクタネゴヨウの新産地発見!

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今年2015年2月23日、屋久島自然クラブの調査で、屋久島町尾之間に、絶滅危惧種ヤクタネゴヨウ(レッドリスト絶滅危惧IB類)の第4の自生地が発見されました。

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モッチョム岳の登山道から双眼鏡でこの流域を観察していて、どうもヤクタネゴヨウに似た木があると考えていた地点で、実際に調査を試みました。現場はこのように、モッチョム岳西壁を望む険しい尾根の上でした。ここに上るための道はありません。読図でルートを見出すところです。

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やせ尾根の上に、ヤクスギやヒノキに交じってヤクタネゴヨウは生きていました。直径数十センチという大径木が4本だけの島内最小の群落です。

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針葉は5本。

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球果(まつぼっくり)は、表面がなんとなく葉っぱっぽい、ゴヨウマツ独特の質感です。

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注意深く地面を観察すると、小さな実生がいくつか。後継樹になるまで育つのは難しい様ですが、ヤクタネゴヨウはまだまだ未来をあきらめていないようです。

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2015.04.29

『屋久島の自然図鑑』神嵜 真貴雄著

『屋久島の自然図鑑』神嵜 真貴雄著 メイツ出版 1800円(税別)
ついに出ました、屋久島のガイド神崎さんのデビュー作。

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とにかく中身の詰まった、大変な力作で、全巻合わせてじつに770点にのぼる写真が使われている。
前半はガイドブック編で、主な自然探索ルートと登山ルートが紹介されている。後半は圧巻の図鑑編588種で、植物・動物・菌類とこれほど多様な生物たちを撮りまとめた例は屋久島で初めてではないか。山・里・渓流で、見かけたことのある生物はほぼ収録されている。
編集は相当な突貫作業だったようで、ページレイアウトには改善の余地がある。特にガイド編は地図の見にくさなどそれが若干目立つ。しかし屋久島を10年にわたって注意深く見つめ続けた男の書いた本だ。見てくれのいいわかったような気になるだけのムック本などとは、記事の深度がそもそも違う。じっくり読むべき本なのだ。
ギリギリ今年の連休に間に合ったことになる。屋久島を訪れる方は、ぜひこの本を一冊荷物に入れて来て欲しい。

2015.03.20

2015.3.21 白谷線国立公園部分2車線化工事についての勉強会

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白谷雲水峡の国立公園内で、県道の2車線化拡幅工事が計画されています。これに対して、町内から検討を要するという指摘がなされ、現地検討会も行わるなど論議が活発になってきました。

これを受けて屋久島町は3月の町報に、『県道白谷雲水峡宮之浦線の改良計画に関する意見募集』というアンケート用紙を織り込み、町民から広く意見を求めています。

...

ただこの解答用紙は、選択回答なしの全面自由記載で、ほとんどパブリックコメントの募集になっており、この問題について勉強していないと、なかなか記入(というか執筆)しにくい内容になっています。

そこで、この問題の発起人である山下さんと手塚さんが、問題の共有を図るべく、明日高平で解説会を開催します。

内 容:道路拡幅工事計画について
  800m区間の自然と植物 
    スライドトーク「白谷雲水峡の魅力」 

日 時: 3月21日(土曜日)
昼の部 13:30〜15:30  モスオーシャンハウス
夜の部 19:00〜21:00  高平公民館

主催・連絡先: 
白谷線拡幅工事計画を学ぶ会  田中 ☎47−3389

お時間のある方は是非ご参加ください

2015.01.16

屋久島史上最強の男、荷物は180kg!

屋久島最強の男の記録。出典がどこだったのか、ようやく再発見した。

『屋久町郷土誌第一巻村落誌上』栗生村落誌 12林業・狩猟業(2)モチの生産

P163 「(栗生の)山崎常彦は、大変な力持ちで、三百斤(百八十㌕)背負ったことがあった。」

180kg。この常彦さんがおそらく屋久島史上最強である。

黒味川上流左岸、七五岳北西面の33林班に、上下5段の餅田跡が現在も残っているらしい。大正年間ここでトビウオ漁が終わってから年末までの半年間、総勢80名ほどの人が従事していたという。

「運搬人夫賃は一たる二十五銭、男で一日一円(米一俵十五円) 距離が遠く一日一回しか運べなかった。」

七五岳の麓から栗生まで、普通30kgのトリモチ樽を3~4個、90~120kg担ぎ下ろしていたのだ。しかし最強の常彦さんは、180kg、つまり樽6個を担いだ大力だった。

同時期に、小杉谷から楠川への屋久杉搬出(山稼ぎ)でも、20貫から30貫担いだという記録が残っているので、これくらいが屋久島の平均的な労働だったのだろう。凄いものだ。

ちなみに米の価格から換算すると、日当の1円(30kgたる×4個)はおそらく現在の1300~2000円程度。常彦さんの稼ぎは人の1.5~2倍で、最大3000円程になる。

これまた出典が不明なのだが、「宴席では力の強いものから上座に座った」という記述もどこかにあった。力=資産 だったのだなあ。いまもその気風は残っているような気もする。

2014.05.17

平成25年 縄文杉登山者数(3月~11月)

【平成25年 縄文杉登山者数】

(3月~11月 シャトルバス運行期間中)

縄文杉荒川口登山者数
67.682人(246.1人/日)

稼働ガイドのべ人数
5,635人( 20.5人/日)
   
縄文杉登山者のガイド利用率
51% 

※1、2、12月のオフシーズンのバス運休期間中はカウントされていないため、年間登山者数はさらに数千人上回ると思われる。
※バス大雨運休日は、6月に2回、9月に1回、10月に2回だった。

データは屋久島観光協会によるものを改変→

「25.xlsx」をダウンロード

2014.03.18

シカの食圧を考えるために、宮島に行ってみたい

宮島は面白そうだ。

神域として古来シカが保護されたため個体群が多く、独特の植生になっているようだが、それがどうも屋久島に非常によく似ている。特に矮小化した植物群があるという話が興味深い。

屋久島のもっとも貴重な植物に、高地矮生植物群がある。なぜ小さくなるのか。昔から様々な説があったものの、シカの食圧により小型化がすすむという進化圧が働いている可能性が高い。 つまり、シカは植物に食害を与える動物ではなく、屋久島の植物に食圧を与えて固有の進化を促し種の多様性をもたらしてきた「環境」なのだ。

念のため断わっておくと、シカによる農作物被害問題と、シカの生態系なかでの行動とは、まったくの別問題である。これを混同して感情まじりにシカを撲滅すべきだという論調になるケースがあるが、屋久島の自然に悪影響を与えかねない危険な考えかたではないだろうか。

むしろシカが狩猟によって大きくその数を減らしたこの50年間は、本来あまねく働くべきシカの食圧が大いに低減してしまった、異常な時代かもしれないのだ。シカ不在中に繁茂した植物をどう考えるべきなのか。 いやむしろ、本来の姿など、どこにもないのかもしれず、自然はダイナミックにその姿を変動させながら大きなうねりとして安定している、ととらえるべきなのだろう。

この宮島のサイトには複数の著者がいるようで、矮小化の原因は不明とする部分と、シカの食圧により小型化したと明記する部分とが混ざっている。これもまた、様々な見解による混乱の現れなのかもしれない。いずれにしてもぜひ見にゆきたい場所の一つだ。 佐渡と宮島は、おそらく屋久島を知るためのカギになる。

宮島・包ケ浦の矮小化した植物

2014.01.17

コケフォレー2014春 in 屋久島

日本蘚苔類学会主催
コケフォレー2014春 in 屋久島
「屋久島のタイ類をわかる」
  ←詳しくはこちらへ

コケフォレーでは野外観察の後,採集品を室内で顕微鏡と図鑑を用いて種名同定しています。次回の2014年度春は,昨年と同様,屋久島で開催します。千葉県立博物館の古木達郎さんを講師としてお招きし,タイ類を中心に学びます。

また,「屋久島コケの会」(代表:小原比呂志)との合同観察会・懇親会も予定しています。
なお,日程が長期にわたりますので,参加を希望される方はご都合のいい日程で申し込みください。また,同伴者の宿泊も可能です。皆さんの参加をお待ちしています。

1.対象:野外でのコケ植物観察と、室内での顕微鏡を使用したコケ同定法を学びたい方。
(なお,顕微鏡の使用に不慣れな方は,3/1に入島し,3/2に開催の顕微鏡使用法講座に
参加してください)

2.月日:2014年3月2日(日)~6日(木)

3.宿舎・顕微鏡観察:「屋久島環境文化研修センター」
〒891-4311 鹿児島県熊毛郡屋久島町安房2739-343  

4.定員:15名(原則として申込の先着順とします。顕微鏡持参の方・同伴の方は定員外とします)

5.募集締切:1月31日

申し込みはこちら

コケフォレー2014春 in 屋久島 【島内参加者向けご案内】

【コケフォーレ島内日帰り参加ご希望の方へ】

屋久島島内にお住まいで、コケに関心があり、きちんと学んでみたい方ならどなたでも応募できます。(高校生以上)
!!!内容確認の上、一番下にある申し込みフォームをご覧ください。!!!

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■日程
①3月2日(日): 9:00‐16:00
顕微鏡使用法講座

講師:西村直樹(岡山理科大学)

②3月3日(月)~ 3月6日(木)
コケフォレー「屋久島のタイ類をわかる」
講師:古木達郎(千葉県立中央博物館、日本蘚苔類学会会長)
「日本の野生植物コケ」(平凡社)のタイ類を分担執筆するなど,我が国におけるタイ類分類の第一人者として知られている。

【テーマ・観察地(天候などにより変更することがあります)】
 3月3日(月):温帯性コケ植物(荒川分かれ周辺)
 3月4日(火):亜熱帯性コケ植物(蛇ノ口滝周辺)
 3月5日(水):冷温帯性のコケ植物(紀元杉周辺)
 3月6日(木):午前 未定,12:00 解散

【一日のスケジュール】
 8:45 環境文化研修センター集合
 9:00‐12:00 野外でコケ観察 (マイクロバス定員に余裕がないので、乗り合わせで現地まで移動)
 12:00‐13:00昼食
 13:00‐18:00 宿舎で解説,顕微鏡観察,種名同定
※午前中はコケ観察、午後は早めに研修センターにもどり、顕微鏡観察を行うという1日の流れです。

■ 持ち物:筆記用具、手持ちのコケの観察道具(ルーペ、図鑑、ピンセットなど)、弁当、飲み物、防寒具(寒いです)、雨具
■ ①顕微鏡使用法講座は、初心者の方はなるべく参加して下さい。 
■ ②コケフォレーの日程は長期にわたりますので,都合のいい日にお申し込みください。屋久島の方の日帰り参加には,定員はありません。
■ 弁当持参の上,車は自家用車か,誰かと乗り合わせでお越しいただけると助かります.
■ 受講料は,1000円/1日 
■ 夕食750円で注文できます。ご希望の方は申し込み書に書き添えてください。
■ 顕微鏡は,ファーブルミニ(20倍,ライト付き!)を一人1台お貸しします.24台あります.タイ類は,これで,結構いけると思います.


参加ご希望の方は、下記をコピーして記入の上、屋久島コケの会 小原までフェイスブックの「メッセージ」 またはメール
mosfo3 @gmail.com(←アットマークを半角に替えてください)で送信してください。受信したばあいはかならず返信します。返信がない場合は、恐れ入りますが再度問い合わせしてください。 
 
~~~下記をコピー~~~~~~~~~~~~~~~
 
 
申込み月日:
参加したい日(2日~5日のうちどの日に参加したいか):
夕食の注文(2日~5日のうちどの日に必要か):
氏名:

住所:

非常時連絡先:

携帯電話:            

携帯メールアドレス:

 
受講料合計:    円
 
夕食代合計:    円
同伴の方(高校生以上のみ)がいる場合には,ご希望をお知らせください。
 
~~~~コピーは以上~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

2013.07.08

『おどろきの中国』 橋爪大三郎×大澤真幸×宮台真司

「そもそも中国は国なのか?」冒頭からこの根源的な問いを掲げる、破天荒な鼎談本。

昨年の雲南、今年の吉林省延辺朝鮮族自治州を訪れて、感じていた疑問がかなり氷解したような気がする。

「国」などという概念が誕生するはるか以前から存在したこの巨大な国が、どのような特質を持ち、それが日本の常識だけではとても把握できないものであること、何代にもわたり異なる王朝が交替しながら、それでも全体として連続性が維持されたのはなぜなのか、それを支えた儒教の意味について、毛沢東までの近代、毛沢東以降の現代。

ズバリ理解できたような気になっている。視界がぱっと開けたような気がする。名著の特徴である。

しかしあまりにも巨大な知識を3人が対話を通じて伝授してくれるもので、正直なところまだ消化しきれずに茫然としている。もう少しいろいろな面から反芻してみなくては。

なぜ日中関係がこんなにも混迷しているのか、これから中国をはじめとする隣の国々とどうお付き合いしてゆけばいいのか、知りたい人、考えたい人にお薦めしたい一冊。

『おどろきの中国』  橋爪大三郎×大澤真幸×宮台真司 講談社現代新書 2013

2013.02.28

3月5日にコケの楽しみ方を学ぶ講演会・講座が開催されます

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2013コケフォレーin 屋久島が3月2日~7日の日程で開催されます。

これは若手研究者向けの強化合宿的な内容ですが、5日には一般向けの講演会と講座が開かれます。

1. 講演「コケ植物の多様性とその美しさ」

 講師:秋山弘之(兵庫県立人と自然の博物館、日本蘚苔類学会会長)
 日時:2013年3月5日(火)20:00-21:00
 場所:屋久島環境文化研修センター  0997-46-2900
 無料、コケに興味がある方でしたら、どなたでもご来場ください。
 
 

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2. コケ講座:「屋久島のコケガイド」のコケをわかる

 内容:「屋久島のコケガイド」に掲載されている主な種類について,
       その特徴を顕微鏡で観察します。また,ルーペではどの部分を
        観察すればいいかを解説・観察します。

 講師(予定):西村直樹(岡山理科大学)
 日程:3月5日(火)9:00~12:00
 場所:屋久島環境文化研修センター(レクチャー室)

 定員:先着15名(定員になり次第,締切ります)
 問合せ・申込み:屋久島環境文化研修センター 0997-46-2900

島内在住でコケに関心のある方、ふるってご参加ください。

2013.02.01

ヤクスギランド~淀川登山口、開通しました。

屋久島町によれば、除雪作業が続けられていた紀元杉~淀川登山口間が、本日2月1日11時に開通とのことです。

宮之浦岳・花之江河方面の積雪情報は、まだ確認できていません。

2013.01.31

GIFアニメで3D

3D=実体視は大好きで、地図をみたり、まねごとで写真から作ったりしています。

でも少々練習が必要なので、「見えません」「できません」という人も多い。

ところがこれをGIFにしてしまえば、あら不思議立体に見えてしまうというアイディアを発見しました。→明治時代の日本3D

なるほどこれならいけるかも。さっそく試作してみました。

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「sango.gif」をダウンロード 動きますか?まあまあ立体に見えますね。

もうひとつ

P1100950
「tsuwabuki.gif」をダウンロード

こんな感じです。なにかに使えそう。

2013.01.19

県道ヤクスギランド線、今朝8:30から開通

○積雪で通行止めだった県道ヤクスギランド線、今朝8:30から開通です。白谷線も通れます。

○町道荒川線(縄文杉へ)は凍結があるので通行注意。
○ヤクスギランド~紀元杉~淀川登山口は積雪で当分のあいだ通行止め。

県道の通行規制情報はこちら

2012.12.19

縄文杉の腐朽枝を補強する必要はない

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(このデッキの真上の大枝に、腐朽が発見された)

屋久島の森の荘厳さは、人為に関わらず、自然のままに長い年月を経たところに生まれる。

たとえ伐採されても、その後の年月によって破壊は癒える。「原生自然」に限りなく近い位置にあることが、屋久島の最大の価値であり、それが善意であれ悪意であれ人為が入ればその分、屋久島の森の真価は損なわれてゆく。
 
 
   
先日林野庁九州森林管理局が、縄文杉の大枝に腐食が見つかったと発表した。古い木になればそんなことは当然で、驚くほどのことはない。とりあえず、観察デッキの、枝が落下するの可能性がある部分を立ち入り禁止にするとのことで、なにか対応を考えるのだろうと思っていた。
 
ところが、林野庁は、縄文杉の大枝が落ちないようにロープで固定するのだという。これには大いに疑問を感じた。そんなことをする必要が、どこにあるのか。

デッキの立入禁止の状況はこちらでよくわかります。
⇒「ざるの洗い方」

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