『世界遺産をシカが喰う シカと森の生態学』
『世界遺産をシカが喰う シカと森の生態学』
湯本貴和・松田裕之編 文一総合出版 2006
今、日本の生態系にニホンジカが大きな影響を与えている。
断片的に聞き知っていた各地の事例を、この本でまとめて知ることができた。屋久島の現状を把握するためにも非常に重要な一冊である。
この本の中で慎重に検討されている問題を実もフタもなく説明すると、①様々な理由でシカが増えており、②その食害は不可逆的に日本の植生を破壊しつつある、③したがって緊急にシカを大量かつ効果的に駆除しなければならない、ということになる。
屋久島に関しては、シカを強力に駆除するべきだという意見に対して、 生命の島74号誌上でYNAC市川が見解を述べているとおり、他所とは異なるフェイズにあるようで、必ずしもシカは増えているまたは今後増加するとは言いきれない。
この本では全国の世界遺産に関する事例をとりあげているが、共同執筆者たちのシカに対する姿勢にはかなりの温度差がある。慎重に検討を重ねなければ、という人から、ただちにシカを殲滅し、その後も絶えぬよう増えぬよう厳密にコントロールすべきだ、と言う人まで、様々である。しかし全般に冷静な分析で構成された、質の高い研究・啓蒙書といえるだろう。
(続く)
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コメント
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鹿対策に狼の導入 参照 http://japan-wolf.org/content/faq/
投稿: 名無し | 2013.01.29 09:19
屋久島にオオカミは少なくともこの7000年ほどはいなかったと思われますので、再導入はぜんぜん意味がないのです。
投稿: mosfo3 | 2013.01.31 11:32