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2006.09.15

gigerさんが教えてくださった論文をチェック

gigerさんがトラックバックで教えてくださった論文をチェック。

「観光地屋久島における過剰利用低減を目指して ―入山客に対する人数調整策の提案-」

中央大学政策学部3年の関根・結城・吉本の3氏の共同執筆による60Pにおよぶ力作。屋久島に関わるこういうレポートや提言のたぐいはこれまでにもたくさん発表されているが、これが大学3年生のまとめた論文ならたいしたものである。

この論文の欠点は、取材ソースに行政機関や外郭団体の担当者しかいないことと、執筆チームが屋久島の現場を(たぶん)みていないことだ。

このためか取材不足で現状把握が甘いのが欠点だ。しかしプロの報告書でも、紙の浪費をしか思えないものが少なからずあることを考えれば、一読に値する論文だといえるだろう。

この論文をごく簡単に要約すると次のようになる。

  1. 屋久島の地域経済が頼みとする自然観光資源は、利用しすぎると荒れて魅力が減少するため、利用を制限する必要がある。自然公園法の『利用調整区域』を導入し立入規制すべきだ。
  2. 限定発売の「入山切符」を、旅行会社が入札で仕入れ、登山客に販売するという方法を提案する。入札制にすることで混雑期は高値、閑散気は安値になるので、ピーク時の環境負荷が減り、利用が平均化するので地域経済のためにもいい。

というもの。

1について異論はない。すごいのは2だ。

縄文杉見物権の間接オークション! 縄文杉も金次第というわけだ。しかもその権利は旅行会社に分配する。

すごいなあ。私のような単純な登山・自然愛好者には、想像もつかない発想だ。

「利用調整区域」については、屋久島の「西部地区」のガイドツアーについてすでに検討している。西部地域の県道下は環境省が直轄する国立公園特別保護地区なので、これはかなり現実的ないい案が出来たと思うのだが、環境省がなぜか乗り気でなく、話が進んでいない。

例として上げるが、縄文杉ルートの利用調整をしようと思ったら、その困難度は西部の比ではないでしょう。

現実的に考えて、負担額が上がれば登山者が減る、という図式は、屋久島には当てはまらない可能性が高い。この論文でも触れられているように、屋久島訪問客は自然のためなら喜んでお金を負担しようという姿勢を持っているからだ。単に縄文杉見物にプレミアがつく結果にしかならないだろう。

論文の著者の3氏はまず一度、屋久島の現場をきちんと見たほうがいいだろうなあ。 

それから財団の大田さんの「当面、まずは少しお金を頂いて…」という発言。 
 …まあきっと100年後の屋久島をよく考えてのことなのでしょう。YNACの事務所でも繰り返しそうおっしゃってましたしね。 

林野庁の協力金がいい例だが、そうやって行政機関が手に入れた「少し」の「お金」はいつの間にか根を生やし、抜こうとしても抜けない厄介な根株になるのだ。だからいずれは環境キップに移行させて行きたい、というだけではその場しのぎの空論にしかならない。林野庁の協力金を含めて、どのように一体化させてゆくのか、スケジュールを検討することが絶対に必要なのだ。

なお論文の中にこんな引用がある。
「今現在約160 人いるガイド業者からの反対の声が大きく、施行に踏み出せないでいるという。(2005 年10 月31 日と11 月4 日に鹿児島県環境生活部環境保護課の竹山栄作氏に対して行ったヒアリング調査より。)」

⇒これは相当ないいがかりだな~。そういう人もいるかもしれないが…いや、施行に反対するガイドって、もしかして私らのことでしょうか?

少なくとも私は「金を取ると客が減るから反対だ」とは言ってない。「どうしてそういういやしい願望を口にしちゃうかな~♪」 と言ってるだけです。⇒鹿児島県竹山氏。

 

ちなみに世界遺産登録10周年シンポジウムの際に横浜国立大の加藤峰夫助教授から提案され、鹿児島県が推進を宣言した『環境キップ』のイメージは、

  • 空港や港で訪問客に任意で買ってもらう。
  • 自然保護に協力している、という感覚とともに、山岳保険、各施設入場フリー、宿やエコツアーガイドの料金の割引など様々な特典がついていて、お買得感のある内容。したがって購入がフェアな取引になっている

というものでした。違いますか?⇒林課長補佐

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コメント

小原さん、ご無沙汰です。
オークション方式というのは最近の流行のようで、私が仕事にしている温室効果ガスの排出権取引なんかでも取り入れられています。ただし、オークション方式をとっても、入札価格がある一定以上の額になるまでは需要は下がらないというのは、英国での排出権取引のオークションでも分かっているので、この部分をどうするかということが必要です。同時に無許可入山のペナルティをそれ相応の額に設定する必要があります。(例えば、富山県条例などは無許可入山は1万円の罰金ですね)
もうひとつは、間接オークションの場合は、購入した旅行会社が販売金額を平均化する可能性が高いので、オークションの場合は、間接オークションよりかは直接オークションの方が意味があるだろうなぁということを考えました。

kinopon様お久しぶり。
専門的なコメントありがとうございます。

なるほど、単なる学生の思いつきかと思ったら、環境ビジネス系のはやりなのね。いかにも立教大が好みそう。
「一定の額になるまでは需要が下がらない」というあたりがツボになるんだろうなあ。

直接オークション、もしほんとにやったらいろいろ面白いことが起きるでしょうね(笑)。

まあこの論文が今後影響力を持つとは、別に私は思っていないし、こういう経済の力学まで使って利用調整をはからなければならないほど屋久島が大変なことになっているとは、現場を知っている私には全然思えないのですけどね。

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