縄文杉の役割
知人から、縄文杉に集中する大勢の人を、島内の他のエリアに分散させることについて意見を求められたので、思いついたことを書き送りました。ここにも紹介しておきます。(一部推敲)
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I 様
ご連絡ありがとうございます。
屋久島の地域経済が激動する時代に、観光をテーマとして若き研究者が取り組んでくださるのは、非常にありがたいことです。私にできることは協力しますので、必要がありましたらどうぞ連絡してください。
YNACは縄文杉への日帰りツアーはありませんが、縄文杉1泊2日のフォレストウォークは行っています。縄文杉を否定しているわけではありません。雑踏にもまれながらひたすら歩いてくるのではなく、混雑を避けてじっくり森の姿を見てくることが、より高い価値を生むと考えるからです。
縄文杉コースの環境負荷対策の件に関しては、前提として2つの側面から押さえておく必要があると思います。
①「環境負荷」は実際にはどのような形でどの程度起きているか。(思い込みやイメージによる決め付けを廃し、生態学的・地形学的及び環境保全工学(?)の切り口から正確に実態を把握する)
②「縄文杉観光」を求める訪問客の実態と動向。それに対応する屋久島地域の観光業を含めた経済構造の変動
我々が今考えているのは、屋久島の果たすべき「役割」ということですね。
これからの社会でこの自然をどのように役立てて行くべきか。
単にお気に入りの屋久島にはまってしまった、という向きへのサービスだけでなく、屋久島に来たことで視野が広がるような、より深く訪問客のためになるサービスシステムを作れないか、というようなことです。地域としてよりポジティブに観光業をデザインしてゆくにはどのような方策があるか、といってもいいです。
たしかに現状を見ると、ハイシーズンに縄文杉その他のエリアでなんらかの利用規制をしてゆく必要はあると思います。
同時に、縄文杉に惹かれて屋久島を訪れたのだけれども、そこで初めて大自然の楽しさ、面白さ、素晴らしさを知り、その厳しさも体験し、目からウロコが落ちた、という人が、若い世代に非常に多いのです。
つまり縄文杉が案内者となって、屋久島の多様な大自然を体験するというドアが開かれる、という構造になっている。このことは将来に向かって非常に重要になってくるのではないかと思います。
また屋久島という地域はこれまでの産業がことごとく凋落してゆくなかで観光業だけは伸びており、島内でも観光業への傾斜が強まってきているという現実があります。すでに(ガイド、交通、宿泊、弁当などからなる)「縄文杉産業」というべきものが、数十億円単位という実態を持ってきています。
この傾向は今後も続くと思われますので、ガイド業ひとつを取ってみても、世代を交代しながら新規就業が続いてゆくことになります。この人材育成のためにどのような方法があるか。地域として観光業の質を高めてゆくにはどうしたらいいか。
前途多難ではありますが、将来を切りひらいてゆくという張り合いを感じます。
とりあえず思いついたことを書いてみました。もうすこし考えてみようと思います。
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