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2007.02.09

『ヤクシカ、厄シカ?』?

2007年2月4日付の朝日新聞全国版の社会面に、『ヤクシカ、厄シカ? 屋久島 植物荒らす/駆除にも壁』という記事が掲載された。ご覧になった方も少なくないと思う。

要旨を引用↓

  • 屋久島で固有種のヤクシカが増えすぎて悪者になりつつある。
  • シダやコケなど自然遺産の評価に関わりかねない植物を食い荒らし,激減させているからだ。
  • ヤクシカ急増の背景には、観光客を呼び込もうと道路整備などで森林を伐採した影響もあるという。
  • とりあえず駆除しようという動きもあるが、地形が険しいことなどから難しい。
  • 対応に苦慮している間にもシカは増え続けている。

とのことで、桑原紀彦記者の署名記事。取材先は矢原徹一九大教授と、立澤史郎北大大学院助手となっている。

(矢原先生のサイトは非常に活動的で面白い。『空飛ぶ教授のエコロジー日記』は自然科学系で国内有数のアクセス数を誇る看板ブログだし、「屋久島研究ネットワーク」は屋久島に関わる研究者を網羅したリンク集で、その広い交友関係を垣間見せてもらえる。)

ヤクシカ問題をリードしている矢原プロジェクトは、自然科学系では最新の研究チームで、植物とシカの動向について今までにない角度から屋久島に切り込んでおり、その成果には学ぶべきものが多い。

朝日の記事は、ほぼこの矢原プロジェクトの趣旨に沿うもので、とてもわかりやすく、まさに屋久島のホットな話題に加油するものになっている。

ただ残念ながら間違いがとっても多い。

このことについて、立澤さんにメールで問い合わせたところ、回答をいただいたので、下記に一部引用。↓

「この桑原さんという記者は、昨年11月末に屋久町で行われた行政関連のイベ ント「南の風交流会」(南薩の行政が毎年テーマを決めて開く交流会;昨年は 屋久種子が会場で、上屋久町がヤクシカをテーマにしました)にヤクシカ問題 を取材に来られていました。」

「・・・私と矢原さんの発言をうまくつなぎ合わせて、わかり やすい=扇動的な表現にされているようです。よくあるパターンではあります が、この時期(ちょうど全戸アンケート配布時期)にこの内容は、誘導・操作 だととられてもおかしくなくまずいと思います。」

「・・・こ ちらの意図以上に関係者のステレオタイプ化が進むことを危惧する状況も生まれています。次の報告会(4月末or5月の見込みです)ではこのあたりの経緯も
あわせて、冷静な議論が進むよう気をつけます。」

「桑原さんには上記のことを伝え、注意をお願いし・・・ すでに「以後注意します」の返事をもらいました。」

このように立澤さんは、事実に基づかない思い込みが一方的に過熱するのを危惧されている。

ヤクシカ害悪論はけっこう島内で定着しつつあるようだが、こういうことこそ思い込みではなく、科学的に正確な判断をしなければならないと思う。私の見解は以前このブログでも書いた

白谷雲水峡のコケが美しいのは、実はシカがそこに生えてくる木の実生を駆除し「管理」しているからかもしれない、とYNACでは仮説を立てており、現在比較調査中。

シカによるコケ管理?動画→「060610_033.avi」をダウンロード  まあ草むしりをしているのだが、もちろんこれだけで確かなことはいえない。

記事の本文と、立澤さんによる訂正箇所はこちらをごらんください→「070204asahiyakushika.doc」をダウンロード  おまけで小原の書き込みもついてます。

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コラム」カテゴリの記事

コメント

今まで読んだヤクシカ関連の記事の中で一番偏っていて、
妙に引っかかる文章でしたが、やはりそうでしたか。

物心付いたときから朝日は読んでいますが、
時々変な思想の記事を書かれて困ってしまいます。
やれやれ。

「どうみてもシカが悪いので駆除するしかない」と、地域にたいして強く合意形成を迫っているのが現段階の矢原プロジェクトです。

島内外に「へえ、屋久島のシカは悪い奴なんだ」と思わせたい、という意図があったのなら、この記事は確かに効果的だったでしょう。

しかしプロジェクトの主張を鵜呑みにして、それを記者の思い込みもごっちゃにして書いたために、この記事はむしろ信頼性をそこねている、と思います。

私としては、
①なにが起きているのか
②それは本当に「深刻な事態」なのか
という点が腑に落ちないと、自分自身が動けないなあ。

「どこの地域でもわかっちゃいない生半可なやつがいて、必ずそんなことをいって足を引っ張るんだ、一刻を争う事態だというのに」みたいなことを某氏から言われましたが、そういわれてもね~。

納得づくでみんなでやろう、という気にさせるのが「合意形成技術」ってもんでしょう。

離島なのでイマイチ実感が沸かないかもしれませんが、
一般に方は確かに害獣のイメージが植え付けられたでしょうね。
突然現れた捨てヤギとかの話ではなくて、古来からそこにいる種なので、多少歪みが出たとしても自然にバランスが取れるようになっていると思うのですけどねぇ。
ただし、農作物の被害が増えたのが確かなら、固持せずに数量限定で狩猟解禁しても良いのでは、と思います。『お犬様』じゃないんですから、動物に生活を脅かされて泣き寝入りするのも何かと。一度解禁されると歯止めが利かなくなりそうな恐れがありますが。

それよりも私個人としては、全くと言って良いほど島外で見たことがありませんが、オーバーユースの方を話題に上げて欲しいです。
かれこれこう言う私も10年来、森に通らせてもらってる身で申し訳無いですが、
毎年のように目に見えて森が痩せ衰えているのが気になります。
観光資源なのでタブーなのかも知れませんが、これこそ取り返しの付かない事になるのでは?

そういえば昨年、ゴールデンウイークの紀元杉前の広場に、7台でコンボイ組んで押しかけてくる私の地元の超大型バスを見たときは、呆れるやら腹が立つやら他県の方に申し訳無いやらの気持ちで一杯でした。
ネットで検索すると、一昨年の同時期にも8台のバスで紀元杉を見に行ったとの記事がヒットしましたので、毎年同規模の一般公募ツアーを行っているようですが、会社に送ったクレームに対して音沙汰無しなので今年もやるつもりでしょう。やめて~。

島内に観光を振興しようという機運はほとんどありませんよ。
むしろ地域文化の急激な変化や観光入り込みの増加の悪影響を懸念し、非難する意見ばかりです。観光関係者はともかく地域全般ではガイド業者など、ともすれば悪者扱いです。

一方でこれまで屋久島を支えてきた基幹産業の凋落は激しく、島内経済は変わらざるを得ません。まっとうに観光育てなければ、というビジョンのある人は少なく、今後それが深刻な課題になってくると思います。

そうですね。
島内のガイドさんはその事を十分認識されているでしょうが、
そう言った情報が全く島外には届かないのです。

一般の雑誌や新聞の記事やTV番組ですが、
奇麗事を並べているだけで無責任に呼び込みをやって、
結果、本来お呼びで無い方も大勢押しかけている感があります。
たまには、森がどのようなダメージを受けているか、どのような取り組みを行うべきか等の話題も取り上げて、島を訪れる人に意識付けを行って欲しいものです。

森にけた違いの被害を与えるのは、国有林伐採のほうでしょうね。
それから自然現象としてまた温暖化による人災として巨大台風。

この二つが大きいと思います。

シカの食害は、今後たとえば大台ケ原並みになるかどうかはわかりませんが、要注意でしょうね。

この手の被害は、取り返しのつかないものになる可能性もある、スケールの大きなものです。

これらに比べれば、現状程度のバスの入り込みや、縄文杉や白谷のオーバーユースは、実はたいした問題ではありません。ちょっとした利用の規制と現場の工夫で、すぐ回復するでしょう。

この場合の問題は、生態系の問題と利用者が受ける印象とは別の話だということと、現場の管理方法を決めるちょっとしたシステムを作れない地元の実力のなさ(私らも含めて)とですね。

でも縄文杉や白谷は、そろそろ新たな役割を持ち始めているような気がします。

はあ。落ち着いて考えてみると、オーバーユースが森に影響を及ぼすのは"面"じゃなくて"線"なので、確かに危険度は高くないですね。
尾之間歩道のウロコのような表皮にびっしり覆われている根っこを見て、人気登山道がいかに病んでいるか改めて気付かされましたが、旨く回復するといいです。

前述のバス事件については、どちらかと言えばモラルの無さの方に腹が立ちましたが。
紀元杉前の広場の端から端に、さながら駅についた列車のように一列に並んだ4台のバス(スーパーロイヤル)からガイドの誘導も無しにわらわらと乗客が降りてきて、危なくてこちらの車が通り抜けられないわ、通り抜けたと思ったら前から更にバスが攻めてきて、仕方なしにバックしたら、中でガイドが笑いながら更に3台続いてくるはで、ゴールデンウイークラッシュの最中によそ様の敷地で図々しく何やっとんじゃーい!って感じでした。
ご当地バスの岩崎さんも、あの狭~い林道でこんな無茶はやった事無いでしょう。
宿に戻ると「今日、縦走から戻ってきたら信じられない光景を見たよ!」と興奮して話す関西の方。思わず「うちの地元がすみません」と同郷の人と頭を下げました。
全く、街中観光じゃないんですから・・・

あー確かにね~。そういうのたまに見ますね。

九重阿蘇とか霧島の山岳観光地へバスを出す感覚だとしたら、そうなるだろうな。
えびの高原で、レンタカーの人が普通にシカに餌をやっているのを見て、びっくりしました。

そういえば、阿蘇や九重の草原でシカは増えていないのでしょうか?あんまり聞きませんが。

えびの高原は、観光施設しかありませんし、敷地にシカが遊びに来るのが売りの人気宿もありましたので、餌付けが当たり前だったようです。側によると5m前後の距離を保ってそわそわしますね。そうかと思えば、えびの高原から離れた所に住むシカは、はるか向こうの尾根にシルエットが見えたと思ったら、あっと言う間に視界から消える程臆病です。そういえば、野之湯にはイノシシを餌付けしている宿もあります。夕方になると前の広場に横に並んでイモが投げられるのを待っていました。

阿蘇や九重でシカが増えたという話は聞いた事無いですね。むしろ登山中でも出会えれば凄い幸運です。
大方の草原は野焼きで木が生えないようにしているので、身を隠すところは無いは、放牧牛の群れが怖いは、車は凄い勢いで走ってるは、で森から出て来れずにひっそりと暮らしているのでは無いでしょうか。

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