シカが喰っていたものは…2 @新高塚
5月22日、夕刻の新高塚小屋。誰かに餌付けされてしまって、いつもこのあたりにたむろしている目つきの悪いオスジカ。なにか硬そうなものを奥歯でごりごり噛んでいる。
ごおりごおりごおりごおり、ごおりごおりごりごおり、よだれがアブクになってだらだら垂れている。またホネか?誰かにカラアゲでも貰ったのか?でもそれにしては妙に硬そうな感じがする。
ひょいっ、とフェイントをかけると、一瞬身構えるが、口の中のものを落そうとはしない。しつこく噛み続けている。まーどうせ骨だろう。ここまで堕ちてしまっては救いようがないな、と小屋に戻ろうとしたそのとき、ポロッとなにかが口から落ちた。思わず「ワッ!」とおどし、シカが逃げた隙に「それ」をゲットした。
石?
こいつ、石を喰ってたのか?
何の石だろう。花崗岩ではない。といって小屋を建てたときの砕石(堆積岩)とも違うような気がする。よだれくさいので、水で洗ってからよく観察するが、やっぱりわからない。で、割ってみた。
簡単に割れた。・・・これはセメントだ。
このシカはなんとセメントを喰っていたのだ。
角喰い、骨喰いはまだわかる。死体喰いもまあ・・・引っかかるものはあるが、餓鬼道に落ちたと考えれば理解はできる。セメントは石灰岩つまり大昔の貝殻やプランクトン殻などの炭酸カルシウムが原料の1つなので、骨に準ずるといえば準ずるのかもしれないが・・・しかしセメントとは。
シカの消化は胃内微生物に頼っている。普通は食べた植物を第一胃で微生物にかもさせて、反芻で粉々にこなしてから、発酵食品として本格的に消化吸収する。そこにセメントを入れるとどうなるのだろうか。
そもそも、そこに転がっている「石」を、このシカは何故食べ始めたのだろうか。すでに餌付けされていたこのシカに誰かが石ころを投げ、それがたまたまセメントだったのだろうか。それともこの哀れなシカの脳裏に神の啓示のようなものが「ピン!」ときて、ただの石ではない「それ」を食べ始めたのだろうか。
シカの堕ち方は留まるところを知らないようである。
夕食の準備をしながら外でくつろいでいると、近くで件のシカがまたごりごりし始めた。どやしつけて取り上げてみると・・・
またもやセメントだった。
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