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2008.05.15

『屋久島森林視察の感想』 河田杰 1933

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前ページの「しぜんかん」第12号で紹介した柿木さんの論文に先立つ昭和8年、国の林業試験場(現在の森林総合研究所)技師の河田杰(かわだ けつ)博士による「屋久島森林視察の感想」(熊本営林局)という冊子が発行されています。

河田博士は昭和15年に東大を卒業し、戦後茨城や千葉の荒廃した海岸におけるクロマツの植林の指導者として知られる専門家で、国有林などの森林施業に植物生態学の視点を導入した先駆者の1人です。

これは、全国の森林を知っている専門家が、初めて屋久島を訪れて、藩政時代初期の第一次伐採が終わってから300年以上手をつけられなかった、小杉谷の大森林を目の当たりにした際の驚愕と喜び、そして何とかこの巨大な自然の全体像を把握したいという想いが炸裂するような論文です。

その中から最後の「9.結び」から引用。

屋久島は、・・・総ての意味からの国宝である、而して宝と云うことは、必ずしも物質的に換算して価ということではない、只宝であるが故に宝である

・・・従って単にこの見地からみれば、吾々は屋久島には、一指さえも触れたくないのである

只此に極めて大切なことは、再得べからざるの宝迄も強いて・・・其滅亡を早からしめる要はないのである、否斯かる事をしてはならぬのである

(一部かな等を変更してあります)

戦争を前にして「森林の更新」という理屈の大伐採直前の屋久島の森林を救いたい、絶叫するかのような訴えに、胸が震えます。その頃にさえ、いやその頃にこそ、柿木さんやこの河田博士のように、屋久島の意味を理解していた人はいたのです。

それにしてもよくこの冊子を、熊本営林局が出版したものです。まだ国有林関係者にも、鷹揚な空気はあったということでしょうか。

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