シャトルバスに入山規制の意味はない
ひとつ前のエントリー「縄文杉ルート荒川線の車両規制 2009.1.29」を読んだ方は、縄文杉は過剰利用が問題だからついに利用規制が始まった、という印象をもたれるかもしれない。
しかし、1月29日の屋久島山岳部車両運行対策協議会では、縄文杉登山を制限するための話し合いは、一切行われていない。計画は、多くの車両によっておこる駐車場の混雑を緩和し、受け入れをスムーズにするためのシステムを示すに過ぎない。
協議会では、人数制限をするには、この4月から施行された『エコツーリズム推進法』の「特定自然観光資源の所在する区域への立入り制限」という項目を当てはめる必要があるが、それを実行に移すのは(まだ)無理だ」というのが共通認識だ。
この点、縄文杉をめぐって景気に湧く(?)島内と、縄文杉は過剰利用が問題になっていて、地元では当然縄文杉を守るための方法が検討されていると思い込んでいる島外の意識には、大きなずれがある。
このことを見越してなのか、協議会の周辺では、記者会見に臨む町長に対して、会議で決めていないことを発言しないように、と注文がついたらしい。実際には、町長はおそらく記者からの質問に答えて、会議で話されなかった「入山規制」についても言及してしまった。
「入山規制を視野に入れなければならない時期」(南日本新聞)「登山客が増え過ぎると、縄文杉などへの悪影響が心配。入山者数の制限についても、国、県と協議していきたい」(毎日新聞)
しかし前述したように、これは町長の勇み足、ないしは記者からの誘導尋問に引っかかったことになる。
南日本新聞の記事は、規制の理由に「車両入り込みの急増による環境負荷の軽減」を上げているが、これは会議の結果と一致しない。
2008年度には、8月の30日間一般車両規制が行われたが、シャトルバス以外にタクシーと貸し切りバスの通行は許可された。このため、島内島外を問わず、旅行業者や大手ガイド業者が貸し切りバスをチャーターして入山し、せまい車道でバス同士が離合できなくなり、友人のあるガイドなどは「混雑はかえってひどくなった」と感想を語っていた。
またこの月の縄文杉入山者は一日平均500人を越え、月間の1日あたり入山者数の最高を記録した。混雑にはある程度慣れているベテランのガイドも「今年の混雑はひどるぎる」とこぼす人が多かった。
しかし今年も昨年同様のやりかたなら、縄文杉登山者が多ければシャトルバスは増便されるというだけのことで、人数制限にはならない。シャトルバスに入山規制の意味はない。
縄文杉登山のアクセスは、これまで主にタクシー、レンタカー、カイドの送迎、路線バス、貸し切りバスの5つの方法があった。今回の計画は、このうちレンタカーとガイドの送迎を締め出し、そこをタクシー、バスが吸い上げるという内容になっている。
また今回突然表面化したポイントに、「ルート利用券 片道¥250」がある。これは町道荒川線の事実上の有料化であり、屋久島町が管理するものと思われる。
法的根拠はよくわからないが、これが実現すると、昨年批判された縄文杉の入山協力金が、別の形で実現することになり、観光客がいたるところで金をむしられる、という風潮を広げることにもつながる。
どうも「縄文杉のために」という煙幕のなかで、民間・行政を交えて、本格的になりふりかまわぬ縄文杉利権の綱引きが始まったのではないか、という危惧をおぼえる。利用者と受け入れ側のフェアな関係を目指す環境キップへの道は遠いようだ。
最近のコメント