7月の皆既日食前後1週間の船便での屋久島入島者を、屋久島町が一元管理する、との報道があったが、その内容に唖然としてしまった。
この記事を読む限り、7月19日~25日の一週間、キャパを越えて押し寄せる観光客は迷惑であり、町として完全規制を貫く、といわんばかりの意気込みである。
こんな大枠を一方的に突然決められても、当事者は困るのだ。
詳しく聞こうと思っても、窓口の「日食予約センター」に問い合わせが殺到して回線がパンク状態になっており、ぜんぜん連絡が取れない(笑)。
かろうじてつながった電話で確認した内容によると、「当日の全体のキャパを宿の定員(4200人)とキャンプ場の定員(300人)計4500人に限定して、宿の取れた人から優先して船の座席を割り振ってゆきます」ということのようである。
日食ツアーというのは要するに町の予約センターを通した予約はすべて日食ツアーということにし、町がマージンを取る、ということらしい。日食ツアーという名のツアーが行われるわけではない。
また、予約センターは申し込み人数が多ければ3月20日に抽選を行って、外れた人は島に入れないという。
なるほどかなり厳しい規制のようだ。ところがさらによく聞くと、「日食予約センター」の予約以外に、各船会社でも一般予約は受け付けるというのである。
それじゃあぜんぜん一元管理じゃないじゃないか(笑)。
鹿児島商船とコスモラインに問い合わせてみると、町からの予約枠がどのくらいになるかわからないが、1ヶ月前の予約開始のその前に、「予約センター」の分を優先して入れ、余った分に一般の申し込みをもらう、とのことである。要するに町にはねられても、普通の予約はぜんぜん可能なのである。
果たしてこの「一元管理」とやらはうまく行くのか?
現在の入島人数のキャパは、1日につきフェリー2便約1500人、ジェットフォイル7便約1750人、合計3250人/日。飛行機6便約450人で、合計約3700人ということになる。
町はすでに「受け入れ可能数4500人」と宣言してしまったのだが、3日間交通が満員になれば、3日分の来島最大人数は11100人で、6600人オーバー。飛行機は除くとしても、5250人オーバー。町が「これで町の決めたキャパは満杯ですからこれ以上予約を入れないでください」、と言ってみたところで、そんなことを各船会社が7月の稼ぎ時に受け入れられるわけがない。
もうすでに破綻が見えているではないか。
この状況では、町が「合法的な来島は町が認めたものだけです、それ以外に来る人は非合法です関知しません」 といったって、それは言い逃れにしかならないだろう。
もし何も手を打たなかった場合、宿の取れなかった5000~6000人はどうするか。山小屋に集中する可能性が高くないか?
予約センターで宿泊を確認したとき、「山小屋に泊ります」という人は確実にいるだろうし、それを拒否する理由もないはずだ。また予約を断られたので、並んでフェリーに乗ってきました、という人だって当然でてくるだろう。
町が人数を決めて、それより多い人に門前払いをしようとしても、現実的な対策を考えなければ、受け入れられなかった何千人という人々が、ただでさえ過剰利用が問題にされている山中に集中するかもしれない、ということだ。
いいのか?それで。
この規制話の当初から、大人数が殺到して島の生活が破綻する、などと町はマイナス面ばかりを強調してきた。しかし、どうもわからないことがある。
関係者は日食って楽しみじゃないのだろうか?
私などは凄く楽しみなのですが。
なにしろ皆既日食がこの世界遺産の地屋久島で見られるのである。世界的大スペクタクルではないか。苦労はあるだろうが、ここはひとつ世界中からやってくる皆さんと一緒にこの一大天然ショーを楽しみましょう!という意見がどこからも出ないのはなぜだろう?
里帰りや知人友人枠は多少期待できるだろう。しかし特設キャンプ場などは用意しない、などと頑張ってる場合ではなく、少なくとも2000~3000人規模のキャンプ村くらいは開設しないとまずいのではないだろうか。
その程度の人数なら、大地震被災地の避難キャンプや難民キャンプ、あるいは何万人クラスの大規模なロックフェスティバルなどのノウハウが、国内に蓄積されているはずだ。
あるいはホームステイ制度を作って、一般世帯に臨時の民宿になってもらうというのはどうだろう?
まだ時間はあるのだ。破綻の見えている計画に固執せず、楽しいイベントとして日食を迎えるわけにはいかないだろうか。
最近のコメント