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宮之浦岳の北東にある、平石岩屋の展望台から、高塚方面をながめたところ。なめらかな滝雲が、高塚・縄文杉方面を包むように流れ下っている。
北にはシベリア寒気団の高気圧、南に台風14号が迫る屋久島。気象情報ではまさに北の風が吹き荒れることになっていた。西側の国割岳・西部林道方面でも、低い雲がすごい速さで南の栗生方面へ流れている。
この滝雲は屋久島にぶつかった冷気のかたまりが作り出したもの。写真の左(北)から右(南)へ流れ、山を下るとともに消えてしまう。
ところがはるか高層では、絹雲が右手前(南西)から左奥(北東)へと流れていた。風向きが上と下とでほぼ正反対。こちらは台風の強烈な上昇気流から北へ向かう流れなのだろう。遠くのとがったピークは愛子岳。
永田岳が美しい。絹雲が速いスピードで左から右へ流れている。宮之浦川の源流には、雲海が波のように寄せては引いて、揺れている。
下ってゆくと、坊主岩付近で雲海に突入。
雲の中は冷気なのでひんやりしている。寒いくらいだ。新高塚小屋近くのヒメシャラ林。このあたりは落葉樹林の様相。
翌朝の縄文杉。 静かな霧の中。
岡山理科大学の屋久島実習「エコツーリズム技法」が今年も行われました。YNACが講師として山の歩き方とか沢の飛び込み方、海の潜り方などを指導します。
これがなぜエコツーリズム技法かって?それはですね、エコツーリズムの真髄は、自然の中で発揮される感性=センスを、知性で裏付けて骨太なものにするというところにあるからです。
ちなみに五感=センサーで取り込まれたいろいろな事がらを、仕分けして整理するのが知性です。
爽快、冷たい、フリクションが効く、滑る、重い、痛い(笑)、快い、水圧、落下する(笑)、登れる、この手掛かりでいける。沢登りではとにかく全身の感覚が全開になります。五感をびんびんに研ぎ澄ますにはこれに限ります。
まだ解明されているとはいえませんが、実は沢登りにはある種の画期的な教育的効果がある可能性があり、一部で注目されつつあります。ホントですって(笑)。
こういうことをたっぷりやってから自然教育に入る、というのが、最高の展開ですね。
写真提供はKさん
鈴川ゴルジュ出口にある二段の滝25m下段右ルートの登攀。クライマーはKさん。ビレイヤーが私。実際はもう少し傾斜緩いです。
水面から登るとちょっとしたボルダームーブで面白いが、水温が低く登れないと限りなく冷えてゆくだろう状況だったので、今回は右手ブッシュから斜めクライムダウンしてテラスへ。
岩はカチカチのホルンフェルス。最後の落ち口にはい上がるところ、ホールドはあるが足がすべすべで、マントルを返すのがとっても怖い。5級、という感じか。
硬いクラックがあちこちあるが、形が不規則なのカムが決まりにくく、実質ディープウォーターソロになるかも(笑)。滝壺は恐ろしく深いので、思い切って遠くに飛べば大丈夫…だと思う。
持ってゆくならエイリアンなど小さいサイズのカムがいいと思います。
奄美大島瀬戸内町の海辺のさんぽ社柳澤さんのつぶやきからの情報。インターネットラジオのUSTREAMで奄美大島の情報AMAMIFM がリアルタイムで配信されている。これはすごい威力だ。
http://www.ustream.tv/channel/amamifm?lang=ja_JP
島内のがけ崩れ状況・復旧状態などの交通情報、
九州電力が400人を動員し総力を挙げて電気の復旧にあたっていること、
保険所からは川や側溝にハブが流てついて潜んでいるという注意喚起、
docomoは避難所になっている住用町東城地区の「体験交流館」などで復旧したが、それ以外の地区ではまだなこと、
などの情報が刻一刻と流されている。これは大きな力になると思う。
・・・今また雨が降ってきたらしい。
屋久島も雨にこそ強いが、何かの理由で県道が寸断されたり、鹿児島との連絡や流通が途絶えたりすることはいろいろ想定できる。非常時に島としてどう対応するか、町や地域レベルでも個人レベルでも練っておく必要があると思う。
10月18日のこと。尾之間のとある川。ここは亜熱帯的な生物の生態が見られて面白いところだ。
沢登りのスタイルでちょっとした岩場のへつり。狭いクラック(ひび割れ)をホールドにしてふと中をのぞくと・・・
「!!!」
なにやらおぞましいものが、奥にうじゃうじゃたかっている。
見ます?
↓↓
これである。ヤンバルトサカヤスデだ。
屋久島の南部、いわさきホテル、尾之間温泉、小島、平内あたりで「ヤンバルトサカヤスデ発生地区により土砂の持ち出しを禁じます」という立て看板をよく見かける。
それ以外の地区に住んでいる者には実感がないのだが、該当地区ではたいへんなことになっていると聞いていた。
で、私もここで初めて実物を見たのだが、意外と大きく、長さ30mm、幅5mmくらいある。クラックの奥で集団でじっとして動かない。ああ、これがそうか、こういうところにもいるのだなあ、珍しい、と思ったのだが、そんなものではなかった。
川原の岩に、コロニーのような大集団が次々と現れたのである。
あっちにもこっちにもうじゃうじゃうじゃうじゃ、大きいものでは径50㎝くらいの群れになっている。隙間に固まっているのもあれば、岩の表面にただ集まっているのもある。うっかり刺激すると臭い。どう臭いかというと・・・なにかのヤニのような・・・ヤスデくさいとしか言いようがない。
島のように孤立した岩に集っている連中もいる。流されてきて助かった、というわけでもなさそうで、いったいなぜこんなところに集ってるのか分からない。繁殖行動のための集団見合いみたいなものだろうか。
こんなものは頼むから増水で流されてしまえ! と念じたら、翌日の19日が前エントリーの大雨であった。ことごとく流れ去ってくれただろうか。(さすがに可哀そうだとは思わない)
このヤンバルトサカヤスデ、台湾から南西諸島伝いに北上し、薩摩半島南部まで分布をひろげている。人為的に土砂や植木の運搬で運ばれるらしい。
屋久島内では、鯛之川などの大きな渓谷が移動の障害になっているはずだ。しかしこのように渓谷に集まることもあるし、永久保や船行でも発生したので、安房周辺や島北部も侵入される可能性は高い。
知らなかったが、こんなものが家の周りに大発生ししたらほんと大変なことだ。アリだけでも大変なのに。
鹿児島県のヤンバルトサカヤスデ蔓延防止パンフレット
※おっとうっかり。この記事の写真はKさんに提供していただきました。ありがとうございました。
19日13:00の降り始めから16:40まで、鹿児島県の安房西観測点(屋久杉自然館付近)では128mmの雨が降り、松峰付近で県道の一部が冠水した。
20~30㎝程度の冠水だが、ザ、ザ、ザ、ザと水を波立てて走る。車高の高いワゴンでさえ、この程度でもけっこう不安を感じる。軽自動車だと相当怖い。マフラーが水没しそうだ。
奄美大島の住用町はすごいことになってしまった。屋久島なら1000mmくらいの雨でもザッ流れてほぼ終いである。雨に関しては、屋久島は鍛えられていると思う。
しばらく遠ざかっておりました。再開します。
飛流落とし
奄美大島が豪雨と増水に襲われているころ、屋久島もかなりの大雨になっていた。
この日私は白谷雲水峡にいた。朝方の雨は上がっていた。昼食をとり、原生林歩道の奉行杉から楠川歩道に向かう頃、再び雨が激しくなってきた。気象情報の予測通りだったが、すでに雨が飽和して山は満水状態で、水が地面にしみ込まない。みるみるあふれて登山道は沢になった。
白谷川はこれ以上増水すると危険である。この時点で森歩きは中止して下ることにした。楠川歩道の白谷小屋跡徒渉点(左俣本流)を渡る。ここさえクリアできれば安全圏に戻ったことになる。
道下の白谷川は、みるみる増水してゆく。好判断だったなあ、と胸をなでおろしていると、下から登ってくる若者のグループがある。
「これから登るの?」
「そうですよ!」
先頭がむっとしたような、いやに強い口調で言う。しかしこの状況である。
「大丈夫かなあ?」
「一応ガイドやってますから!」
その男は勢いよく叫んで、お客さんなのだろう、不安顔な3人の女性を率いて行ってしまった。う~むガイドだったのか・・・余計な口出しをしたことになるか。
しかしなあ。
さつき吊橋に戻ると、白谷川はいよいよ大増水の様相だ。「飛流落とし」(↑トップの動画)もすごい迫力だが、その先がすごかった。
憩いの大岩
わかるだろうか?本流から左の旧川筋に水が勢いよいく溢れ、遊歩道が渡れない。ここまで増水するのは珍しい。
当然下から登ってくる人はいない。この場合、飛流橋まで戻って、飛流歩道から駐車場へ下山するしかない。弥生杉歩道を迂回することもできるが、途中滝で水浴びさせられる所があるだろう。
白谷広場まで戻ると、 ここの橋もなかなか迫力ある様相になっていた。
白谷広場
もし白谷に行って、入口がこんな状態だったら、考えますね。
白谷小屋跡の徒渉点には、非常用の岩と倒木を使ってなんとか渡れる箇所が一応ある。おそらくあのガイド君はそれを使えるという目算があったのだろう。
しかし明らかに増水が始まっている状況で、非常事態にそこならなんとかなる、という程度のルートをあてにして出発するという判断は、正しいといえるだろうか。リスク管理面から考えさせられる。
(ところで彼ら…無事帰ってきたんだろうね)
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