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2010.12.08

「屋久島町エコツーリズム推進全体構想」について

11月18日に素案が固まった「屋久島町エコツーリズム推進全体構想」は、12月の屋久島町定例町議会に提案されることになっている。

これに先立つ12月10日、屋久島町の安房公民館で意見交換会が開かれることになったそうだ。

素案はできたがこれに強く反対する勢力があるため、意見を言わせる機会を持たざるを得ない、というわけだ。議会制民主主義が心もとないので、直接政治でみんなで話し合ってみよう、というわけである。屋久島ではこのところこういう催しが非常に多い。

素案のキモは、すでに話題になっているように、縄文杉観光登山の利用調整、つまり最大人数の上限を決める、ということを盛り込んだ点にある。この人数を何人にするかで、推進協議会はもめている。

屋久島ではエコツーリズムを基本とした観光政策を進めてゆくことが決まっている。それを決めたのは「屋久島地区エコツーリズム推進協議会」で、その構成メンバーは

林野庁屋久島森林管理署 署長
屋久島森林環境保全センター 所長
鹿児島県観光課 課長
鹿児島県環境保護課 課長 
屋久島環境文化財団 事務局長
鹿児島県熊毛支庁屋久島事務所 所長
屋久島農業協同組合 組合理事長
屋久島観光協会 会長
屋久島漁業協同組合 代表理事組合長
屋久島町商工会 会長
屋久島森林組合 組合長
屋久島町 町長(会 長)
環境省屋久島自然保護官事務所 首席自然保護官
設立年月日:平成16年9月2日

というわけで、屋久島の関連行政機関はほぼ全部入っている。

おもにこの構想を推進する立場にあるのは、環境省と屋久島町環境政策課だ。環境省は国立公園に関して「保護と利用』の両輪を目的にしている。町環境政策課は、観光よりも環境等を優先する傾向が強い。こちらは一日の上限420人を提案している。(日帰り360人+避難小屋泊下山が60人)

これに対して屋久島観光協会は、ドル箱である縄文杉観光に制限をかけるとは自分で自分の首を絞めるようなものであり、上限600人、連休などはそれ以上も認めるべき、と主張した。

縄文杉へ行く人数を減らすのではなく、歩道を拡幅するとか周回ルートにするとか、いろいろ出来ることはあるだろう、という主張に対して、いや、観光客にこびてこれ以上の整備などするべきではない、と観光政策課を中心とした、地域ナショナリスト系は突っぱねようとする。

推進協議会では当初600人、段階的に420人へ移行する、という消費税増税のような妥協案が提出され、観光協会がこれをのんだところで素案は決定、となったわけである。「・・・混雑を緩和するための大株歩道の周回化の是非について協議を進めたい」という微妙な文言も入っている。

どちらも自分たちの意見を強く主張しているわけだが、残念ながらいずれの立場にも、今後屋久島は、エコツーリズムに立脚しつついかに身を持ち崩さずにいい観光を作り上げ、地域経済の柱に育ててゆくか、という視点はみられない。

実際のところ、環境省や鹿児島県は何もしなかったわけではない。縄文杉と宮之浦岳縦走路は木道化が進み、(大変で地道な作業を必要とする)これまで問題になっていた道の侵食はほぼ止まった。また現在、新高塚小屋の新しいトイレの建設が始まっている。

だが行政は、施設整備が遅すぎる(世界遺産登録から18年もたっている)と指摘されるのを逃れるため、観光客が増えたのが悪い、と責任を押し付けるような姿勢をとっている。これはいくらなんでも間違っている。

というふうに心もとないことは多々あるのだが、とりあえず、妥協案としてこの素案でいいのではないだろうか。この素案は、利用調整(人数規制)の話だけでなく、ガイドの認定制度や、西部地区の利用ガイドラインなど、重要なテーマをいくつも含んでいる。人数制限と、登山道の改良は、どちらか正しいか、ではなく、同時に行っていい仕事だと思う。 

全体構想そのものは今の屋久島に必要なものだと思う。そして現場では縄文杉コース全体を、そして屋久島の世界遺産エリアやその他の区画も、いつも責任と権限をもった担当者がキチンを目配りしていることが必要だ。

大切なのは、屋久島観光の将来あるべき姿はこれだ、というビジョンがあるかどうかだ。会議ではそのことを念頭に置いた発言かどうか吟味すれば、その意見が妥当かどうか判断できるだろう。

そして、何人かで声高に反対意見を叫び続け、意見交換会を紛糾させるのはあんがい簡単なことだ。そういうやり方で、合意形成を妨害しようとしている人たちがいないかどうか。10日の会議に参加される方は注意深く見てきてください。

私としてはこういう問題は意見交換会をひらいたりするより、現場レベルで深く検討したうえで実務者協議で進めてもらっていいと思う。問題点を抽出し、フィードバックが機能する仕組みにしておけばいいのだ。

それよりも少なくともこういう大切な問題を、政争の攻撃材料などに使われては迷惑である。世界遺産の将来を左右する問題を、選挙の小道具などにしてもらっては困るのだ。

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