新高塚小屋トイレについて
新高塚小屋トイレは、現在雪をかぶって冬季の眠りについている。
2010年3月、屋久島山岳部利用対策協議会は新高塚小屋トイレの自己処理型トイレの新設を合意した。工事はヘリで新高塚小屋まで小型の重機まで上げる大規模なものになり、2011年6月に完成、7月から使用が始まった。
完成後に、その利用の経過を観察した上で淀川小屋、高塚小屋などのトイレ整備をどのように進めるか、同協議会で検討することになっている。
山岳トイレとして実績のあるTSS式土壌浸潤型トイレが採用されている。これは優れた分解処理能力のあるトイレで、処理水を土壌に「浸潤」させて蒸散させることにより方法をとっている。
【図 TSS汚水処理システム概要】(株式会社ティー・エス・エス HPより引用)
ただし、この処理能力が実際に屋久島の高地でどの程度実績を上げられるかは、これから何年か見守らなければわからない。
このトイレの管理作業には、
雨水を貯水槽へ引く雨どいの詰まり
便器から消化槽への詰まり
消化槽の浮遊物(スカム)と沈殿物の状態チェック
ゴミの撤去
分水槽のフィルターチェック
貯留槽の蒸散待ち水量チェック、
など、数段階の細かなチェックがある。なかなか世話の焼けるトイレなのだ。
この手の公的な山岳トイレは、環境省が建設し、管理は自治体に任されることが多い。しかし新高塚小屋については、環境省と屋久島町(環境政策課)が協定を結び、分担して管理することが決められている。
具体的には町が月に一回、環境省が月に一回、観光協会から委託(金額は年30万円程度)を受けた観光協会が月に一回、現地へ出向き作業に当たる。複雑な仕組みだが、日本ではありがちな分担方式だ。
積雪期の12月12日から今年(平成24)3月まで、新高塚トイレは冬季閉鎖期間にはいった。積雪の状況をみて、使用開始日が決められる。
前述のとおり、今年度の実績を見て、来年度以降の管理作業や、携帯トイレとの併用方針、また他のトイレをどうするかなどを、この期間に検討することになっている。ところがこの作業が進んでいないという。
環境省屋久島管理事務所によると、観光協会が委託からの報告書と、町環境政策課からの報告書が提出されていないのだそうだ。実はどちらも同じガイド業者に仕事を委託しており、その業者が報告書を提出していないらしい。これでは話が始まらないわけである。
ともあれ新高塚トイレは、初シーズンを終えた。来年度の連休シーズンを無事乗り切れるか?また必要な管理人員(その選定を含めて)を確保する方策は? など課題は多い。しかし屋久島初の本格的自己処理型トイレである。なんとしても軌道に乗せて、山の快適な利用を維持するべく、関係者は知恵を集めていっそう頑張らなければならない。
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