本当に地球が丸いような気がする。愛子岳から太平洋の展望。
環境省チームの世界遺産調査に同行してきた。場所は世界遺産の東の腕、小杉谷~愛子岳。国有林伐採のはざまに残された、白谷雲水峡よりも狭い森だが、伐採の進んだ屋久島東部にあってはその貴重さはかけがえのないものだ。
その中に、小瀬田から小杉谷へと続く、古道が通っている。小瀬田~愛子岳間はひたすら尾根登りの続くきつい道だが、山頂直下から小杉谷へは緩やかな深い森の中をゆく歩きやすいいい道で、学生の頃(30年も前!)よく縦走のコースとして使っていたし、5年ほど前まではしばしば通っていた。
今回の環境省調査同行は、だから5年ぶりということになる。屋久島に住んでいるからと言って、全コースを毎年チェックできるわけではないので、インターバルはまあそんなものだが、台風ギャップがあちこちあったので、道の状態は気になっていた。環境省のMさんに声をかけていただいたので、渡りに船とゆくことにした。
道はこんな雰囲気。以前のビニールテープに加えて、誰かがここ2~3年の間に突破したらしく、ところどころピンクテープが付いている。道はあるのだが、なにしろわかりにくい。かなり山慣れした人でも、迷うところは多いだろう。
愛子沢の渡渉点。昨日の雨でけっこう増水している。なんとか渡れる程度だった。雨の後は無理だろう。なおエアリアマップなどの登山地図にこの路線が記されていることがあるが、ほとんどは線が間違っている。
でもさすがに古道で、森のしっかりしているところは道型もしっかりしている。このように要所には石段が組まれ、歩きやすい。平らなところでは、完全に消えているように見えるところもある。
山頂直下の急な巻き道(←ここは万一落ちると取り返しがつかない。固定ザイルがほしいところ) を経て小瀬田からの道と合流し、ここからは一般ルートで頂上へ向かう。山頂部はこのような岩場が数か所あり、なかなか難所だ。乾いていれば大丈夫だが、冬場に雪や氷がついた時は、ザイルをつけた方がいい場合もある。愛子岳と本富岳は、安易に登ったり、人に薦めたりしていい山ではないと思う。
頂上は快晴。素晴らしい展望が貸し切りだ。宮之浦岳方面を望むと、伐採後は落葉樹が多くやや白っぽく見え、原生林は黒々と見えるのがわかる。
左やや上に広がる青い谷間は安房川小杉谷の上流。太鼓岩から見える風景をさらに俯瞰する位置にあたり、かつてはその禿山ぶりに、知人で屋久杉材の運搬をされていたAさんがあきれて「切るも切ったもんだ」と語ったところだ。右手の双耳峰はヨウジガ高岳で、その下の黒々とした森の谷間が白谷雲水峡。写真中央やや右はゲンタンクボ(愛子沢上流)で、落葉樹が目立つ。
その左は太忠岳・石塚山から荒川方面。写真では不鮮明だが、愛子岳から黒っぽい世界遺産地域が石塚山へ帯状に続いているのがわかる。 いつも天柱石から愛子岳に人が登っていないか見るので、反対に双眼鏡でのぞいてみたが、よくわからない。雲の下には荒川ダムが、昨日の雨で満タンになり、放水しているのが見える。
このルートはモミの大木とスギの切り株が多く、なぜかスギの成木は少ない。引き返す道すがら、何気なく入ってみた切り株の中が、巨大な空間になっているのを発見。2本合体しているようだ。ウイルソン株より一回り小さいくらいだろうか。思わぬ見っけものだった。
小杉谷も間近。間伐林の中を行く。このルートを登る場合、小杉谷から登り口を探すのがかなりの難関だ。
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