屋久島本の世界

2008.07.11

クライミング記録集『屋久島の白い壁』 米沢弘夫著

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『屋久島の白い壁』 米澤弘夫 (鹿児島黒稜会 九州大学山岳部OB)自費出版 ¥3000 

「モッチョム岳、七五岳、大障子岳。屋久島の巨大な岩壁を次々と開拓した伝説のクライマーが、その足跡をついに一冊に著した決定版!」

屋久島には大きな花崗岩の壁が多い。モッチョム南壁の突っ立ち具合など、人里から見える岩としては国内最大のもので、七五岳北壁(↑表紙写真にその登攀シーン。またYNAC屋久島イラストマップの左下部に描かれている岩山がそれ。)や、永田の村から永田岳左にちらりと見える巨大な大障子岳南西壁とともに、屋久島三大岩壁と呼ばれている。

他にも二又川オナゴニタ奥壁や鯛之川千尋滝左スラブなど目立つ壁は数多く、あんなの登れるのだろうかと、つくづく見入ってしまうこともある。

それらの壁をことごとく開拓したのが米沢先生である。先生とお呼びするのは、私の出身校である鹿児島大学の現役理学部教授でおられるからだ。

私はワンダーフォーゲル同好会に所属していて、沢登りをするために日々グラウンドで走ったりしていたのだが、そこへ毎日颯爽と現れて鉄棒できっちり30回懸垂をして去ってゆく米沢先生の姿には、なにか格の違いといったものが感じられ背筋がのびる気がしたものだった。

先生は1970年代の鹿児島大山岳部顧問としての活動からしばらく期間を置いて、90年代にはいり、本格的に屋久島の大岩壁のフリークライミングに取りくみ始め、2008年の現在まで毎年画期的なルートを開拓し続けた。

ロック・クライミングといっても、プロテクション(ボルトなど)の整備が行われグレード付けまで済んだ既成ルートの登攀と、まったく誰も登ったことのない壁にルートを切り開くのとでは、人間の事業としてスケールも重量感もまるで次元が違うのである。

この本は徹頭徹尾、一連の岩壁開拓登攀の記録集だ。テクニカルな記述はもちろんだが、開拓に賭ける熱意と戦慄、作業のなかでの恐怖と成功の爆発的な歓喜、仲間との強い絆や、身勝手なパートナーへの苛立ちなどがリアルに描き出されている。

岩登りの記録集として圧倒的なバイブルであることは論を待たないが、クライマーでなくとも、あのモッチョムの岩壁を見上げてなにか胸にぐっと来るものを感じた人には、ぜひこの米沢先生の人生を読んでいただきたい。

島内では宮之浦の「書泉フローラ」と、安房の「泊書店」で販売中です。島外の方は小原まで連絡いただければ手配します。

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2008.05.15

『屋久島森林視察の感想』 河田杰 1933

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前ページの「しぜんかん」第12号で紹介した柿木さんの論文に先立つ昭和8年、国の林業試験場(現在の森林総合研究所)技師の河田杰(かわだ けつ)博士による「屋久島森林視察の感想」(熊本営林局)という冊子が発行されています。

河田博士は昭和15年に東大を卒業し、戦後茨城や千葉の荒廃した海岸におけるクロマツの植林の指導者として知られる専門家で、国有林などの森林施業に植物生態学の視点を導入した先駆者の1人です。

これは、全国の森林を知っている専門家が、初めて屋久島を訪れて、藩政時代初期の第一次伐採が終わってから300年以上手をつけられなかった、小杉谷の大森林を目の当たりにした際の驚愕と喜び、そして何とかこの巨大な自然の全体像を把握したいという想いが炸裂するような論文です。

その中から最後の「9.結び」から引用。

屋久島は、・・・総ての意味からの国宝である、而して宝と云うことは、必ずしも物質的に換算して価ということではない、只宝であるが故に宝である

・・・従って単にこの見地からみれば、吾々は屋久島には、一指さえも触れたくないのである

只此に極めて大切なことは、再得べからざるの宝迄も強いて・・・其滅亡を早からしめる要はないのである、否斯かる事をしてはならぬのである

(一部かな等を変更してあります)

戦争を前にして「森林の更新」という理屈の大伐採直前の屋久島の森林を救いたい、絶叫するかのような訴えに、胸が震えます。その頃にさえ、いやその頃にこそ、柿木さんやこの河田博士のように、屋久島の意味を理解していた人はいたのです。

それにしてもよくこの冊子を、熊本営林局が出版したものです。まだ国有林関係者にも、鷹揚な空気はあったということでしょうか。

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2008.05.14

「しぜんかん」第12号

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「しぜんかん」第12号が出ました。屋久島町誕生記念号とのタイトルつきで、普段よりページ数の多いビジュアルな仕上がりになっています。

ページを開くと自然館の年表。平成元年の創立ですので、自然館は今年でもう創立20周年を迎えるのですね。早いものです。実をいいますと、小原も自然館の学芸員募集に応募したのですが残念ながら2人受験したうちの、次点となったのでした。

しかし学芸員は現職の松本薫さんで本当によかった。当時の屋久町の人事担当者は人を見る目があったなあ~と、この年表の着実な歩みをながめつつ思います。

記事の中でひときわ(私の)目を引くのは、その松本さんの筆による記事「屋久島林業史の父 柿木司さん」です。

昭和15年に発表された柿木さんの「屋久杉の成立に関する研究」は、国有林伐採が始まってまださほど経っていない屋久島の森林を実地に調査し、そこに遺された多くの薩摩藩政期以前の屋久杉伐採遺跡を世に明らかにした画期的な論文でした。私もかつてこの論文を読んで、昔は営林署にも偉い人がいたものだ・・・と感銘を受けたものでした。

そして柿木さんの残した資料が自然館に委託され、この秋には閲覧が始まるそうで、とても楽しみです。

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さて「しぜんかん」ですが、意外なところに小原が登場していました。

自然館のロビー右側のマルチビジョン。『花崗岩の島』というタイトルの映像で、不思議な渓谷が写っています。深い淵の中央に写っている白い点。これが安房川を遡行する小原のヘルメットであります。よくみるとその左にもう1人赤いヘルメットかいますが、これは”ネイチャーガイドオフィスまなつ”の真津さんです。

この映像はもう17~18年も前に鹿児島の南日本放送の「どーんと鹿児島」で撮影した安房川沢登りの再編集版なのです。なんと懐かしい。

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2008.04.02

『屋久島ブック 2008』

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そして屋久島ブック。いまさらいうまでもないが、現在屋久島関連ではもっとも充実したガイドムックである。

YNACはなんだか出演しまくっています。わっしーなどいたるところに出てきます。小原も渋いところにいます。

そして最後のページにいたると!

でも小さな島ひとつで毎年このボリュームを更新するのは大変な作業なのだ。そういう難しさも感じさせる。タイアップやカタログ記事も悪くは無いのだが、それなりの切り口や見識がみられないと、・・・屋久島ブックがいずれ『るるぶ』化してしまう懸念もないではない。

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『岳人別冊 春山2008』

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花、花、花。花であふれんばかりの本。

表紙からして大和葛城山を埋めつくすような満開のツツジ。素晴らしい。かつてはササ原だったが、それがツツジにとって変わられたのだという。どこかで聞いたような話ではある。

大峰のオオヤマレンゲも美しい。でも文中に「保護柵があり」その中に咲いているという記述がある。これもシカに追い詰められた植物だ。

どうもツツジの咲き誇る山は、いずれもシカとのかかわりを抜きにしては語れないような気がする。

冒頭に屋久島、黒味岳の記事。(小原出演しています)

取材の時期がちょっとずれてしまって、この華やかな紙面のなかで、意外とおとなしい記事・・・かなあ。

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2008.04.01

『ヤマケイJOY 2008春号』

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ヤマケイJOY春号の表紙を飾る美女は、なんとYNAC研修生(短期ね)の立田由里子でした。研修のときは地味に屋久島の地面を調べたり、ゾウムシの愛らしさを強調したりしていましたが、編集長のOさんにスカウトされ(計られたか?)、堂々の登場です。

特別紀行 田口ランディの源流紀行「光の雨の森をゆく。屋久島」

冒頭から田淵睦深さんの写真がもの凄い。花山のスケールの大きさが圧倒的に迫ってくる。そしてランディさんは偉い。この登山のために1ヶ月近くの間、本当に毎日3Km欠かさずに歩いて体を作ってきた。

なおこのときの登山を支えたのは、実はYNAC樫村の料理の数々だった。ぜひ皆さんにご馳走したいものである。小原も登場しています。

2年前まで『屋久島ブック』を担当していたOさんが『ヤマケイJOY』に移ってから、このムックは大幅に変貌を遂げた。スミレ新聞とか、初子さんとか、とにかく面白い。

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『るるぶ屋久島奄美種子島’08~’09』

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るるぶ最新版。もうとっくに出てましたが。

小原、マイナーに3ヶ所登場しています。全部川のそばです(笑)。

るるぶの巻頭特集について岡田愛が分析したことがあるのですが(⇒YNAC通信17号)、その年の屋久島観光の現状を反映している傾向が見えるのです。

縄文杉のガイドが登場しなくなって2~3年たちますが、今後縄文杉ガイド登山の凋落ということはあるだろうか?

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2007.11.20

屋久島の蘚苔類チェックリスト

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『蘚苔類研究 第9巻第6号』 2007年10月pp159-197

横山勇人・山口登美夫・西村直樹・古木達郎・秋山弘之: 屋久島(鹿児島県)の蘚苔類目録.

広島大学院生の横山勇人さんを筆頭著者とする屋久島の蘚苔類チェックリストがついに完成。『蘚苔類研究』に堂々掲載されました。

蘚苔類のチェックリストとは、現在までにその地域で確認されたコケの一覧表のことで、屋久島にどんなコケが生育しているか調べるときには、絶対必要な文献です。

簡単にいうと、「このコケは図鑑で調べると○○コケみたいだけど、リストにあるかな~? ・・・むむ、載ってない。じゃあ違うんだな。」 というふうに使います。

あるいは他にそれらしいのもないし、リストに載ってるから一応これにしておこう、というようにあいまいに処理するためのアリバイとしても役に立ちます。「保留」がどんどん増えてゆくよりも精神衛生上ずっといいものです。(はい、お恥ずかしいです、老師。)

ただし、過去の文献に載っている種が本当に正しくその種かどうかは要確認のことが多く、このリストについてはこれから検討を積み重ねて行くのだ、と著者の1人西村教授はおっしゃいます。

われわれもぜひ得点にからみたいものですね。

中身はこんなんです。↓

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・・・決してこれを見れば種類がわかる、というものではないのでご注意ください。

なお屋久島のコケ愛好者用に、ということで別刷をいただきました。ご希望の方は小原までご連絡ください。

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2007.11.17

『日本エコツアー・ガイドブック』

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『日本エコツアー・ガイドブック』 海津ゆりえ.岩波書店,2007.10.¥1900+税

日本各地でエコツアーを作り上げてきた「人々の半生に焦点をあて、彼らの言葉をとおしてフィールドを紹介する」というねらいのガイドブック。

YNACも取り上げてもらっています。「松本社長の半生」ということですが、そうだったな~、こんなことを話し合ったり考えたりして、ひとつひとつ作ってきたな~、と、やや感慨深いものがありました。

考えてみたら島内のエコツアーメニューというのは、ほぼ全部YNACが創めたものです。縄文杉と宮之浦岳の日帰りは止めましたが。

さすが海津さん、なかなかうまく紹介してくれています。松本をご存知の方は、文中の写真を見て吹き出すかも(笑)、市川と小原も脇役で出ています。小原の淀川の写真も一枚使われています。

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2007.10.23

『至宝の大自然屋久島‐源流を求めて』

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『至宝の大自然屋久島‐源流を求めて‐太田五雄山岳記録写真文集』 南方新社 2007年10月 10,000円+税

屋久島山岳地域研究の第一人者太田五雄さんの写真集。「この45年間、調査の傍ら撮影した写真は数千点にも及び・・・」とのことで、山岳・渓谷登攀の集大成的作品を期待したのだが、登攀的な写真は無く、意外にも屋久島全体を一通り網羅するような内容だった。古き時代の屋久島を感じさせる作品は少なく、比較的最近撮影されたものが多いようだ。

内容的には、なんといっても渓谷の写真が目を引く。最近は渓谷の写真の露出も増えてきたが、ここに収録されているのはきちんと沢登りをしなければたどり着けない光景の数々である。屋久島クラッシックというべき本流筋の滝やゴルジュ(岩壁にはさまれた峡谷部)が多く、とくに黒味川ゴルジュや鯛之川のナメの写真が世に出るのは珍しい。渓谷の資料としては貴重なものである。

この本は10,000円+税と非常に高価で、おそらく採算を度外視して発行に踏み切られたのではないか。しかしこういう作品は形にしておくべきなのだ。このような自叙伝的な労作に対しては、細かな事柄の批評ではなく、その全体像をとらえ、味わうことが大切なのだろう。

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2007.09.26

『日本の幻の滝』

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『日本の幻の滝』 志水哲也 山と渓谷社 ¥3,600.+税 2007.9.

畏友志水哲也の最新作。

峡谷の奥深くに君臨し、流域を支配する巨大な滝群がこの写真集の主人公だ。普通の人間は決して見ることを許されず、核心部に達する力のあるものだけが真の姿を記録することが出来る、それこそが幻の滝である。

収録された作品を1点ずつ仔細にみてゆく。収録された滝のいくつかへアプローチし、その核心部へ侵入するために、彼は国内でも上級から最難クラスの沢登りルートを単独で突破している。

また小さな人間の視点では巨大なスケールを表現出来ない場合には、迷わず空撮を行っている。

滝を写真で表現するために彼が費やした努力の内容と時間の質は、沢登りという表現手段を共有するものにはとりわけ強く迫ってくるものだ。一点ずつ見て行くと、その作品を撮れたときの作者の喜びが思われて、胸が熱くなってくる。

飯豊連峰の梅花皮(かいらぎ)大滝200m、奥利根・越後沢の中俣大滝200m、立山称名滝350m、黒部川・剱沢大滝134m(ただし両岸側壁500m)。

いずれも沢登りの世界では超有名なジャイアントたちである。

屋久島では幻の滝の代表格である『竜王の滝』3段110mが収録されている。2段目右岸大スラブからのアングルは、これまでほとんど知られることのなかったこの滝の姿を捉えており、画期的なものだ。貴重としかいいようがない。

滝に思いを持つ人にはぜひおすすめしたい一冊だ。

(でもこれを見て「竜王の滝に行ってみたい!」なんて考えだけは、起こさないでくださいね)

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2007.09.14

2007前期 屋久島本抄

今年も屋久島関連の書籍がいろいろ出ているのに、なかなか紹介できずにいます。とりあえず4冊リストアップ。

『屋久島の山守 千年の仕事』高田久夫/塩野米松 草思社 ¥1,900.+税

小杉谷ににらみを効かせてきた高田さんの自叙伝。端座して聞くべき数々の話題。屋久島の国有林労働史を知る上でも重要な資料となるだろう。

『島 ひと 昔語り』 古居智子/黒飛淳 南日本新聞開発センター ¥1,238+税(=¥1300)

島内の年配者からの聞き書きをまとめた読み物。いい本だが、最近屋久島に多い、昔はすべて古きよき時代、と捉えるタイプの切り口には疑問を感じている。

『屋久島の森のすがた 「生命の島」の森林生態学』 金谷整一・吉丸博史編 文一総合出版 ¥2,500+税

一般向け著作の少なかった林学系の研究者たちが、屋久島に関する現時点の成果をまとめてくれた。面白いトピックス満載ではあるが、とにかく著者が多すぎて、仕事テーマのサンプル集、といった観もある。もしかすると編者が、関係者や仲間うちに対しておおいに気を使わされたのかもしれない。

『屋久町郷土誌 第四巻 自然・歴史・民俗』 ¥5,000.(町民¥2,500.).(税込?)

合併前になんとか間に合った最終巻。第一巻~第三巻が各集落誌で、四巻がこれ。

なにしろ20年近く前の原稿をやっとまとめたものなので、著者の中にはかなりいろいろ意見があったようである。そのまんまの章もあるようだし、現時点で修正や補遺を加えた著者もいる。

とはいえ、歴史の章や民俗の章などは、これまでにない充実した内容で、あたらしく紹介される資料・事実も数多い。この四巻は今後の屋久島学の基礎文献になるもののひとつと思われるので、内容をよく研究してから、いずれきちんと紹介します。

(第五巻の行政・社会・経済産業編は、まあ・・・いいや、という感じで見送りになったらしい・・・?)

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2007.02.14

るるぶ2007最新版

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『るるぶ屋久島・奄美』最新版がでました。見まごうことなきこの表紙が、すでに書店に並んでいます。

YNACは今回「沢登り」と「MTB」で登場しています。

P10のものすごい滝の写真もうちのです。・・・はたしてこんな写真を出していいのでしょうか? よい子はあぶないのでまねをしないように。

(どうしてもやってみたければ、ぜひYNACに問い合わせてくださいね。沢登りとMTB以外の各種ツアーもお薦めです)

編集の八木さんありがとうございました。

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2007.02.12

『シェルパ斉藤の ニッポンの山をパックパッキング』

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フィールドライフに連載された 『シェルパ斉藤の ニッポンの山をパックパッキング』 がクールなムックになった。

斉藤さん、軽やかに歩いている。

屋久島のゼロ・トゥ・ゼロを含む、9編のパックパッキング紀行がのっている。ほとんどのルートは、学生のころ重なったり交差したことがあるので、その気配がまた懐かしいのだが、一方で視点も文章も、登山系の書籍がもつ特有のにおいがなく、一読して新鮮だ。

そしてあらためて日本の山道を高く評価しているのが嬉しいところだ。国内から世界各地へ、さまざまな道を歩いた人の、安定したぶれのない言葉。

なかでも著者らしいのは、「わが町から東京へ行けてしまう」 トレイル・トゥ・トウキョウ編である。瑞牆山から雲取山・日原まで、要は奥秩父~奥多摩縦走なのだが、舗装路を踏まずに60km歩いて上京しますというキレた設定。いいねえ。さすが。

屋久島以外の山歩きは、そういえば何年もごぶさたしている。この本を読んで、また普通に山を歩きたくなった。

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2007.01.09

「日本の貴重なコケの森」

050530_180_1 ヤクスギランドの蘚苔林

昨年末、「蘚苔類研究 第9巻第4号」が届きました。

目次のなかで目を惹いたのが「日本の貴重なコケの森」選定の告知です。

これは日本蘚苔類学会の事業で、選定委員長は屋久島のコケ愛好者の導師(メンター)である西村直樹さん(岡山理科大教授)であります。

屋久島では、白谷よりも、「荒川流域」を私は推したいな~。年間降水量記録日本一を誇る圧倒的な蘚苔林にして、コケ多様性のホットスポット!アクセスがよく、淀川にもヤクスギランドにも入れるし太忠岳もビャクシン沢もあるし。フウチョウゴケの再発見というイベントもあったので、範囲を本流筋まで拡げて「安房川流域」でもいいのかもしれません。

まあ『屋久島のコケガイド』もあることですし、いずれにしても屋久島が選ばれるのはまちがいないでしょう。

この選定事業は、単にめでたくコケの森100選をえらぼうというものではなく、その芯には重要なコケの生育地を破壊から守る、という切実な問題があります。「その『種』の生育を可能にしている『地域』全体を保護・保全する」 ために 「私たちに何ができるか?」というコケ研究者・愛好者の自問への回答としてこの事業は計画されているのです。

地域フィールドに生きる私たちにとって、この問いは永久にのしかかる重い課題でもありますが、まあそれはおいといて、楽しそうな選定の試みに注目したいと思います。

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この第9巻第4号は兵庫県立人と自然の博物館秋山弘之さんのご活躍(といいますか孤軍奮闘?)により、屋久島特集の感もあり。

また、あの「ナンジャモンジャゴケ」の発見者として有名な故高木典雄先生の追悼記事が載せられています。

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2006.10.27

『世界遺産 屋久島』 大澤雅彦編 朝倉書店 近日発売

2006年10月30日発売予定。
朝倉書店のサイトで内容が公開されました。

目次を見ると、前半はやはり大澤先生の独壇場といった感じ。「4.2 低地部における帰化植物の侵入と分布の拡大」は目新しい。このテーマでまとめられた初文献かも。
後半では「屋久島国有林の施業史」が目を引きます。稲本龍生元屋久島森林管理署長のおきみやげでしょう。

しかし期待していた「屋久島花崗岩の生成」とか、「河川におけるオオウナギの生態」とかは載ってませんでした。残念。

以下そのまま引用。さあ、使えるかな?

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世界遺産屋久島 ―亜熱帯の自然と生態系―

B5/288ページ/2006年10月30日
ISBN4-254-18025-X C3040
定価9,975円(税込)

大澤雅彦 編

わが国有数の世界自然遺産として貴重かつ優美な自然を有する屋久島の現状と魅力をヴィジュアルに活写。〔内容〕気象/地質・地形/植物相と植生/動物相と生態/暮らしと植生のかかわり/屋久島の利用と保全/屋久島の人,歴史,未来/他

執筆者一覧
【編集者】
大澤雅彦、田川日出夫、山極寿一
【執筆者(執筆順)】
松本淳、江口卓、山本啓司、下川悦郎、堀田満、田川日出夫、大澤雅彦、岩川文寛、相場慎一郎、朱宮丈晴、武生雅明、沢田治雄、揚妻直樹、揚妻-柳原芳美、市川聡、花輪伸一、山根正気、青木淳一、稲本龍生、小野寺浩、東岡礼治、大山勇作、松本毅、田村省二、山本秀雄、山極寿一
【写真提供】
日下田紀三、塚田拓

目次
第Ⅰ部 屋久島の気候と地形・地表動態
1.気候
 1.1 東アジアのモンスーンと屋久島の気候
 1.2 雨の島の降雨特性
 1.3 山頂付近の気候特性
2. 地質・地形
 2.1 屋久島北西部の花崗岩分布域の地形と地質
 2.2 地表動態と土砂災害

第Ⅱ部 屋久島の植物相と植生
1. 屋久島の植物相とその特性
 1.1 屋久島の植物相とその成立
 1.2 屋久島の着生植物
2. 常緑広葉樹の特性とフェノロジー
 2.1 熱帯・温帯移行部の温度環境と常緑樹の北限
 2.2 葉の寿命とシュート・フェノロジー
 2.3 常緑樹の葉の特性とリーフサイズ
 2.4 常緑広葉樹のシュートの生活史
 2.5 常緑樹の3つの芽タイプの構造
 2.6 芽の構造,分枝型と樹型
3. 屋久島の森林植生帯
 3.1 山地植生テンプレートからみた屋久島の位置
 3.2 屋久島の山地植生
 3.3 屋久島の垂直分布帯区分
 3.4 群落の地形分布,群落動態を考慮した植生帯区分
 3.5 植生帯の境界条件
4. 屋久島低地部と海岸の植生
 4.1 低地部植物相の特徴
 4.2 低地部における帰化植物の侵入と分布の拡大
 4.3 春田浜の植生
5. 屋久島の森林の分布と特性
 5.1 屋久島の森林の構造と機能
 5.2 地形に伴う植生パターン
 5.3 山地帯スギ林の構造と動態
 5.4 スギ天然林の初期再生
6. 衛星からみた屋久島の植生

第Ⅲ部 屋久島の動物相と生態
1. ヤクシカの生態と食性
 1.1 ヤクシカの森林環境利用
 1.2 白谷雲水峡のヤクシカの食性
2. 照葉樹林に住むヤクシマザルの採食戦略
3. 屋久島の鳥類相と垂直分布
 3.1 研究史
 3.2 鳥類相
 3.3 鳥類の垂直分布
4. 屋久島の昆虫相
 4.1 昆虫の種数
 4.2 ファウナの特徴
 4.3 昆虫の垂直分布
 4.4 種間関係と生態
5. 屋久島の森のダニ―ササラダニ類―

第Ⅳ部 人の暮らしと植生のかかわり
1. 屋久島低地部における自然利用と植生遷移
 1.1 低地部の土地利用と自然利用の生活誌
 1.2 奥岳と低地部のかかわり
 1.3 集落の成立と自然林の保護
 1.4 低地部における自然・半自然植生と遷移
 1.5 草本期の遷移
 1.6 先駆木本期から極相林への遷移
2. 屋久島国有林の施業史
 2.1 国有林経営の開始まで(明治・大正期)
 2.2 本格的国有林経営の開始(昭和初期)
 2.3 機械化(昭和初期)
 2.4 皆伐施業の展開(昭和10年代)
 2.5 復興資材生産と皆伐・人工造林(昭和20年代~30年代前半)
 2.6 高度成長期の施業(昭和30年代後半~40年代前半)
 2.7 自然保護への対応(昭和40年代後半~)
 2.8 現在の森林施業と森林の将来像

第Ⅴ部 世界遺産屋久島の利用と保全
1. 環境文化村構想とその後
 1.1 環境文化村構想とは
 1.2 構想その後
2. 屋久島におけるエコツーリズム
 2.1 屋久島におけるエコツーリズムの現状と今後の方向
 2.2 屋久島におけるエコツーリズムを地元ではどう考えるか
 2.3 屋久島におけるエコツアーの試みと現状
3. 公園計画と自然保護

第Ⅵ部 屋久島の人・歴史・未来
1. 屋久島の岳参り
2. 屋久島西部地区の変遷
3. 「学びの島」の歴史と未来

屋久島の自然と人―あとがきにかえて―
西部林道周辺地域と屋久島をめぐる近代年表
索引

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2006.10.18

『里のイラストマップ』 コンプリート!

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『里のイラストマップ』 田中ミエ 生命の島刊 ¥2000

「生命の島」誌に連載された、屋久島の里のイラストマップシリーズがついに完成した。

全集落をていねいなイラストで描き、簡潔な記述で紹介したこのシリーズは、これまでに第1集、第2集(各¥1000)が刊行され、なお未収録の集落をのこしていたが、結局第3集は出ずにコンプリート版として発表された。

私は全部出揃ってから買おうと思っていたので、このコンプリート版の登場は歓迎だが、しかし1集、2集をすでに購入し、第3集を楽しみにしていた人にすれば、釈然としないことになるだろう。いきさつはよく知らないが、なんとなくすっきりしないものはある。

それはさておき、この冊子は田中ミエさんの力作であり、実にいい仕事だと思う。今の屋久島の地域の姿を眺めるにもいいし、ガイドブックとしても非常に役に立つ。別の時代に、今の時代のことを確認する記録資料にもなるし、一種の定点観測として、10年おきにこの仕事を反復する、なんてこともできる。こういうしっかりしたストレートな記録は、何にでも応用できるものなのだ。(「おとなの塗り絵」にも使えそう)

屋久島に根を生やした人も、止まり木にした人も、素通りした人にさえも、この本はためになるだろう。ちょっと高いが、こういうものの価値は販売価格とは関係ないと私は思っている。

おすすめの一冊だ。

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2006.10.01

予告『世界遺産屋久島 亜熱帯の自然と生態系』

世界遺産屋久島‐亜熱帯の自然と生態系.

大澤雅彦編 朝倉書店 ¥9,975.

2006年10月出版予定

2年遅れでやっと原稿が出そろい、出版のめどが立ったようです。

共著者には様々な分野の専門家が名をつらねており、幅広い内容が編集されているようです。YNACの松本・市川も一部執筆を担当しています。

専門書であるにしても、292ページというサイズでこの値段はあまりにも高価なので、販売はきわめて厳しいと思いますが、まあ自然科学書コーナーか図書館で見かけたら、ぜひ手にとって見てください。

出版後に、レビューを載せる予定です。

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2006.09.04

『屋久島、もっと知りたい~人と暮らし編』

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『屋久島、もっと知りたい~人と暮らし編』下野敏見著 2006年9月 南方新社

季刊『生命の島』の4年間の連載が一冊にまとめられたもので、著者の40年間にわたる精力的な屋久島民俗学フィールドワークの、ほぼ全貌を見渡すことができる。

この40年といえば、屋久島はもちろん、全国の民俗が急激に変化した時代である。わかりやすく書かれた一般書であるとともに、現在の屋久島民俗学のほぼ決定版といっていいのではないか。

屋久島エコツーリズムにかかわる者=屋久島を解き明かす者としては、一言一句にいたるまでおろそかにできない言葉や知識がつまっている。もちろん本書の中の見解への異論もあるし、調査不十分な点も見られる。しかしそれは我々に与えられた課題だろう。

下野先生は、いわば福の神のような方である。

講義をこれまでに何回か聞く機会があったか、その地域で見聞きし調べたことを丁寧に検討して、ほかの地域と広く比較し、見解を述べられる。そのさい、取るに足りないものや見解の異なるものを切り捨てるような気配がなく、すべてに価値を発見されているようだ。

そのお話はまるで頌歌(ほめうた)のようだ。聞いているとその地域が秘めている宝物がどんどん感じられてくるようになり、実に誇らしい思いに満たされてしまう。地域に誇りと自信を与えるためには、まったくこれ以上の方法はないのではないだろうか。

いま、生命の島で読んだ記憶をたどりながら、一読し終えたところ。この本はさらに読み込み、考え、確実にものにしたいと思っている。

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2006.07.27

フィールドライフ 夏号

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シェルパ斉藤さんが、「フィールドライフ」に『ニッポンの山をバックパッキング』を連載されています。その夏号に 「Vol.8 ゼロ・トゥ・ゼロの屋久島の完全縦走」 が登場しました。

梅雨前期の屋久島の大雨をくぐり抜け、楠川港⇒白谷⇒高塚⇒鹿之沢⇒花山⇒大川之滝というきれいな横断ラインでトレースした紀行文です。

様々な経験を積みかさねてきた人のしっかりとした視座、広い確かなまなざしというものは、日々混沌にもてあそばれている者にとって、ほっと一息つかせてくれる力を持っています。

ルートの最後を締める、花山登山口から大川之滝まで2時間弱のダメ押し的林道歩き。これをiPodで2枚組の新譜を聞きながら流す、というテクはちょっと思いつかなかった。林道歩きというのはまあ必要悪のようなものだから、一人のときこれはいいかも。

思えば梅雨前期までは快適でした。夏の屋久島の山はとにかく暑いです。炎天下の林道を2時間なんて歩いていると、本当に熱中症になりかねませんから、ご注意を。登山適期はやはり春~初夏と、秋~初冬。これからなら、10月~11月がいいでしょうね。

いいですよ、斉藤さんの文章。

(以前紹介した「岳人」6月号の岩城さんの記事もよかった。やはり一人の山歩きはいいなあ。)

このフィールドライフはフリーマガジンで、全国の登山具店やアウトドアショップでただで配布されています。ちょっと紹介が遅くなりましたが、まだ手に入ると思います。

→送料のみで送付もしてくれるようです。http://www.sideriver.com/ec/html/item/001/004/item3136.html

(yumeoさん、連絡ありがとうございました!)

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2006.05.30

『黒と茶の幻想』

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YNACのサイトでも市川が取り上げているので、すでにご存知の方も多いと思います。屋久島(Y島)を舞台にした、恩田陸の名作です。文庫版がでました。

屋久島が舞台というより、屋久島に旅行に来て、一日ずつあちこちの森を歩いてフェリーで帰る、という旅行を枠組みとしたストーリー・・・、いや、ストーリーというストーリーではないんだな~。まあ、ネタバレは嫌うところであり、『夜のピクニック』に通じるジャンル? と紹介するにとどめます。

YNACのフォレストウォークのお客さんには、きっとよくわかる場面があることでしょう。

終盤の、トロッコ道を歩いているときの一節。

「明るい五月の午後。

一人の少女が藤棚の下で降るように散る藤の花を見上げている。」

ここを読むと、なぜか胸にぐっとこみ上げるものがあり、泣けてきそうになります。なんでしょうねこれは。

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2006.05.27

『屋久島のコケガイド』

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明日はコケの観察会が開かれます。フィールドはヤクスギランド近くの林道で、コケの種類のけっこう多い、お気に入りの場所。

講師は小原というところが、まったく屋久島も人材がいないもんだという状況を表していますが、仕方がありません。来年はヤッシーにやってもらおう。

Photo_5 ←ヤッシー@縄文杉

なお、『屋久島のコケガイド』は、白谷やヤクスギランドで見かけるような、主だったコケが収録されているいいガイドブックです。隠花植物・菌類写真の第一人者、伊沢正名師と、コケのフィールドワーカーのトップ木口博史先生の労作で、(財)屋久島環境文化財団に問い合わせれば、¥500+送料で購入できます。

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2006.05.21

岳人2006年6月号 尾之間歩道~花山歩道

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岳人編集部、岩城さんの屋久島紀行が掲載されている。尾之間歩道~花山歩道。

・・・屋久島の山歩きってこうだよなあ、という思いが湧き出すような、素敵な記事である。単独行の時の心の使い方や、行動に必要な配慮がさりげなくちりばめられているし、とくに、テントの利用をきちんと書いているのはとてもいいことだと思う。淀川や高塚ならともかく、屋久島のちゃんとしたルートをしっかり歩くのなら、テント泊が基本になるからだ。

屋久島の縦走にあこがれている方、大好きな方に、おすすめです。

 

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2006.05.15

『世界遺産をシカが喰う』その2

興味深かったのは横田岳人さんによる紀伊山地の報告(pp105-123)と前迫ゆりさんによる春日山の報告(pp147-165)の報告だ。

数年前に大台ケ原を訪れたことがある。山頂部のトウヒ林で噂どおりの悲惨な食害を見たのだが、その後で口直しに西大台のブナ・ナラ・モミのすばらしい森へ向かった。ほっとしながらさわやかな草の小道を彷徨いながらその美しさを称えたものだ。

ところがこの報告によると、そのすっきりした林床さえも、以前はスズタケが密生した猛烈なヤブであり、それがシカによって10年ほどで食い尽くされた跡だったというのである。まったく、知らないということは怖いものだ。

この報告では、シカの食害を受けた後の状況がいろいろ検証されているのだが、興味深いことに、指摘されている各被害の結果が、我々が観察している屋久島の「原生自然」の性質と一致するように思えるのだ。(以下文章は引用ではなく小原が本文の文意をまとめたもの)

「大台ケ原の森林帯に生え、成長点が地上部にあるスズタケはシカに食い尽くされてしまうが、風の強い尾根部に生え、成長点が地際にあるミヤコザサは喰われても芽を出し続けることが出来、生き残る」 

⇒ 屋久島「森林内にスズタケタイプのササはなく、山頂部をミヤコザサに似た性質のヤクシマダケが被っている」

「大峰山のオオヤマレンゲは食い尽くされ、もはやシカ除け柵の中にしか生き残っていない」 ⇒ 屋久島「オオヤマレンゲはごく限られた一部の山の、背の届かないような岩の上にのみ成育している。」

「大台ケ原でも春日山でも、シカの食害を受け続けると、食べやすい植物は食べつくされてしまい、相対的に毒やトゲがある忌避植物が広く優先してくる」 

⇒ 屋久島 「シカの多い場所で優先する下層植生の多くは忌避植物または着生植物である。ヤクスギやアザミは全国でも特異的といえるようなトゲトゲしさとなり、食べやすい夏緑樹は高木や岩場に着生して難を逃れているように見える。オオタニワタリやヒトツバ、ノキシノブなどの着生シダは全般に忌避性を失っているのか、地上に落ちると速やかにシカに喰われてしまう」

「春日山照葉樹林ではカシ・シイ類など優先種の後継樹が喰われてしまうため、優先種の少ない不安定な森林に変化している」

⇒ 屋久島「西部照葉樹林はシイ・カシ類など照葉樹林で優先するはずの種が優先していない、妙な森である」

「ササなど下層植生が消失すると、土壌が流失して木々の根が地表に露出し、風倒・根返りを起こしやすくなり、土砂崩れにいたると思われる」

⇒ 屋久島「土壌は流失し、常に薄い。植生がなくなると大規模な土石流が発生し谷を埋める。渓谷には巨岩が多いが、これはシカの影響に先立つ、7000年前の幸屋火砕流によって大規模な植生破壊の結果かもしれないが。」

まあこれらはほとんど観察結果であって、科学的に検証されてもいないし、われながら舌足らずだとも思うのだが、つまり屋久島は、紀伊半島で現在起こっているような「被害」を、とっくの昔から受け続けている、という印象を受ける。屋久島ではそれらは「被害」ではなく「環境」なのではないか。

鬼界火山の破局的噴火は屋久島の生態系を壊滅させた。その後の荒廃した島の中で、ある種は滅び、ある種は生きながらえ、少しずつ島外からの来訪者を加えて生態系は復活してきたはずである。その中で他所とは異なるフェイズの、シカVS植物の安定機構が磨き上げられてきたのではないか。そんな思いがしてならない。

屋久島にはオオカミなどのシカを捕食する動物はいた証拠はないし、人間による狩猟圧が高まったのはせいぜい明治以降、それより古いとしても薩摩藩政時代より遡るものではないだろう。屋久島で植物が生きてゆくには、シカの脅威に立ち向かわなければならず、種ごとにそれをクリアする方法をもっていなければならない。乱暴な言い方をするなら、シカが多少増減したくらいで滅ぶ植物は、とっくの昔に滅んでいるはずなのである。

この非情な、巨大な実験のようなシステムが機能した果てに、現在の屋久島生態系があるのではないかと私は思う。生物多様性の保全は確かに重要だが、シカをとにかく「害悪」として殲滅するという考えは、論拠が不十分すぎる。

シカを取り除けばそれは喰われずに済むシダはあるだろう。しかし他所と違ってヤクシカの食圧が安定した「環境」であるなら、それは非常に人為的な、不自然な行為だといえるだろう。

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2006.05.14

『世界遺産をシカが喰う シカと森の生態学』

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『世界遺産をシカが喰う シカと森の生態学』 

湯本貴和・松田裕之編 文一総合出版 2006

今、日本の生態系にニホンジカが大きな影響を与えている。

断片的に聞き知っていた各地の事例を、この本でまとめて知ることができた。屋久島の現状を把握するためにも非常に重要な一冊である。

この本の中で慎重に検討されている問題を実もフタもなく説明すると、①様々な理由でシカが増えており、②その食害は不可逆的に日本の植生を破壊しつつある、③したがって緊急にシカを大量かつ効果的に駆除しなければならない、ということになる。

屋久島に関しては、シカを強力に駆除するべきだという意見に対して、 生命の島74号誌上でYNAC市川が見解を述べているとおり、他所とは異なるフェイズにあるようで、必ずしもシカは増えているまたは今後増加するとは言いきれない。

この本では全国の世界遺産に関する事例をとりあげているが、共同執筆者たちのシカに対する姿勢にはかなりの温度差がある。慎重に検討を重ねなければ、という人から、ただちにシカを殲滅し、その後も絶えぬよう増えぬよう厳密にコントロールすべきだ、と言う人まで、様々である。しかし全般に冷静な分析で構成された、質の高い研究・啓蒙書といえるだろう。

(続く)

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2006.05.12

「サルと歩いた屋久島」 

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「サルと歩いた屋久島」 山極寿一 山と渓谷社 2006. 

サルのことをあまり知らなくても、屋久島の自然に関心のある人なら、山極寿一さんの名前はどこかで耳にしたことがあると思う。屋久島のサル研究の基礎を築いた一人であり、ゴリラの研究で世界にその名を知られる第一人者である。

「生命の島」などで一般向けにも多くの記事を執筆されている山極さんだが、「通し」で屋久島とご自分にについて書かれたものはこの本が初めてではないだろうか。

広い視野とエネルギッシュな行動力、冷静な筆致。研究や自然保護についての内容もさることながら、その過程で得られた結果や人脈を生かし、より社会的な成果へつなげてゆく力量。この人が現在の屋久島に与えた影響は大きい。

サル研究の最新のまとめはもちろん非常にためになるし、「・・・よ、よく死にませんでしたね」級のエピソードがちらりほらりと飛び出すのもさすがだが、通読してやはり印象に残るのは、西部照葉樹林についての話だ。研究書や論文で断片的に読み知ったことも、本人の述懐でまとめて読むのは一段と味わい深いものがある。

折りしも西部の森の利用については、昨年度末に屋久島エコツーリズム推進協議会の作業部会で検討されたばかりだ。会議では山極さんから1時間にわたり現状と将来に関する見解が示され、これを元に観光協会ガイド部会から提出された厳しい規制を旨とするガイドライン案が検討されて、一応の決着を見た。(残念ながら西部の森を紹介するガイドの資格の認定についてはうやむやなままになってしまい、なお厳しい詰めを残しているのだが)

山極さんを始め、西部に関わった人々の森への深い理解と想いを受け継ぎ、損ずることなく屋久島を訪れる人々や次の世代へ伝えてゆきたいと、あらためて肝に命じた。

「ひかりのあめふるしま」 田口ランディ 幻冬社文庫)を読んで屋久島に触れた人には、ぜひこの本を手にとっていただきたいと思う。

 

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2006.01.25

屋久島ブック2006

ヤマケイの担当者Oさんから、原稿のゲラが届きました。『屋久島ブック2006』にちょこっと出演するので、その部分の原稿チェックです。

現在は、これだけ屋久島が注目されながら、ガイドブック不毛の時代です。これには我々の責任もないとはいえないのですが、・・・やっぱり本を作るというのはなかなか大変で。 そのなかで、一本筋の通ったガイドといえば、いまはこの『屋久島ブック』でしょう。

発売は例年3月頃になります。さあ、はやいとこ赤を入れないと。 鬼のように訂正してくれと言われているものですから。

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