エコツアーガイドの本棚

2013.07.08

『おどろきの中国』 橋爪大三郎×大澤真幸×宮台真司

「そもそも中国は国なのか?」冒頭からこの根源的な問いを掲げる、破天荒な鼎談本。

昨年の雲南、今年の吉林省延辺朝鮮族自治州を訪れて、感じていた疑問がかなり氷解したような気がする。

「国」などという概念が誕生するはるか以前から存在したこの巨大な国が、どのような特質を持ち、それが日本の常識だけではとても把握できないものであること、何代にもわたり異なる王朝が交替しながら、それでも全体として連続性が維持されたのはなぜなのか、それを支えた儒教の意味について、毛沢東までの近代、毛沢東以降の現代。

ズバリ理解できたような気になっている。視界がぱっと開けたような気がする。名著の特徴である。

しかしあまりにも巨大な知識を3人が対話を通じて伝授してくれるもので、正直なところまだ消化しきれずに茫然としている。もう少しいろいろな面から反芻してみなくては。

なぜ日中関係がこんなにも混迷しているのか、これから中国をはじめとする隣の国々とどうお付き合いしてゆけばいいのか、知りたい人、考えたい人にお薦めしたい一冊。

『おどろきの中国』  橋爪大三郎×大澤真幸×宮台真司 講談社現代新書 2013

2011.05.26

『コケはともだち』 藤井久子 リトルモア

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『コケはともだち』 藤井久子 リトルモア \1500+税

コケ友バードさんこと藤井久子さんのコケ紹介エッセイ。

兵庫県立人と自然の博物館の秋山さんを知恵袋に、コケと友達になる道をかろやかに書き綴っています。

おもしろいですよ。これ。

普段の暮らしの中や、いろいろな旅先でめざとくコケを見つけ出し、きちんと調べて心にしまってゆく(ブログにも書く)、その中から生まれてきた本です。

後半にはコケ図鑑が収録されているのだが、それぞれのコケがキャラになっている(笑)。ぜひどこかで手にとってご覧ください。置いてある書店は少ないが、amazonでも注文できるようです。

くわしくは「かわいいコケ ブログ」へ。

なお、コケ図鑑の写真に、YNACカシムラくんが屋久島で撮影した写真が3点ほど収録されています。←こちらもチェックを!

2009.03.30

『俺は沢ヤだ!』 成瀬陽一 東京新聞出版局

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親友成瀬陽一の本が出ました。この衝撃的な表紙写真、「岳人」誌上に発表された時から話題になっていましたが、ついにカラーで堂々登場。もうしびれるなんてものじゃありません。かっこいいぞ!成瀬!

内容はそのおりおりの記録を中心に連載されたものの再編集で、国内はもちろん台湾や中国内陸部のほとんどありえないような記録、経験、思いなどがつづられています。

教員として優れた資質を持ちながら、束縛を嫌い非常勤のままでいるというのは、彼らしくもあり、ちっとはほのといぶきのこともまじめに考えろ!とつねづね指摘されてきたところでもありますが、こんな本を出してそろそろ一区切りとでも考えているのかと思えば、全然そうでも無さそう。

沢登りの世界にはまってみたい方は、ぜひご購入ください。おそらく沢登り界の伝説の一冊となるでしょう。

2009.02.17

田口ランディ「『パピヨン』

田口ランディの新作 『パピヨン』

PR動画です。

角川学芸出版HP
http://www.kadokawagakugei.com/detail.php?p_cd=200809000524

ある意味屋久島が転換となった思索の遍歴が、どれほどの高みにまでたどりついたか。
ぜひ多くの方に読んでいただきたいと思います。

2009.02.15

地理の教科書に屋久島登場 (私も)

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安房中学校で使っている地理の教科書です。

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「イラストマップをつくろう」の章に屋久島登場。さすが話題の地域ですね。 空撮に縄文杉、白谷、ヤクザル・・・。

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なんと「エコツアー」も登場です。白谷、まだあんまり荒れてないな。今は森を見つめる人々と、奥のほうにガイドらしい人物が。

ん? これは・・・

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あれっ! これってもしかして私? ・・・私ですよね。

なんと、教科書に登場です。

いつだ、これ? えりの水色のジャケットは、たしか昔着ていたビアスポの雨具。10年くらい前かなあ。

だいたいなんで私が出てるんでしょうね?誰の写真だろう。

現場がいまこんな感じですですから、やっぱり10年くらい前かなあ。

2008.12.14

Rock & Snow 2008年冬号 pp92-95 屋久島大障子岳 南西面『遠い山』

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飯山健治・遠藤由加ペアによる大障子岳南西面「遠い山」登攀の記録。

大障子岳の南側の岩壁帯には元々米沢先生と鹿大山岳部による「西野ルート」という屋久島最長のフリールートがあった。その西側の急峻な斜面の植生が台風ではがれ落ちて、さらに大きな岩壁が出現し、これまた米沢先生によって初登された。

「遠い山」はこれらのルートに一部新しいラインと、人工登攀部分のフリー化を付け加えて登られた25ピッチ、5.12というすごいボリュームのフリールート。

文章は記録というよりこの登攀を巡る経緯や心象風景が中心になっている。

2008.12.12

『とりぱん』1~6巻 とりのなん子著 講談社

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これは傑作です!はまってます。

この傑作度をどのように紹介したらいいんでしょうか・・・。

「岩手県盛岡市に住むらしい作者が、自宅の鳥のエサ台を中心にいろいろな生き物や自然を観察してつづる、一人称4コマエッセイマンガ」 

これではちょっとそっけないなあ。う~む。

まずいろんなものの観察があります。なんかふと現れた鳥とか、いきなり勃発した事態、日々のちょっとした変化など。そこにどうツッコミを入れて面白がったか、というささやかなエピソードのオンパレードなんですが、そこで発揮される感性の幅と深さが尋常でない。ギャグのセンスもいい。

毎回の連載のしめに一人称の1ページ作品がのるのですが、最後の決めゼリフが凄くて感心する。感動というのとも少し違う、胸がびりびりと共振するような感じ。この人おそろしく切れ味のいい刃物を持っている。

考えてみたら私も故郷が北海道なので、自然現象のいちいちにとてもわかるものが多いのでした。

いいなあ。とりのなん子さん。屋久島にも出張して作品描いたりしてくれないかなあ。屋久島の自然って、マンガで描いたらけっこう面白いと思うんですけどね。

2008.06.22

『ヤマケイJOY2008夏号』

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『ヤマケイJOY2008夏号』です。安房の泊書店に入荷したのをやっと入手しました。

屋久島とはほぼ関係ありませんが、表紙がYNAC短期研修生の立田由里子@涸沢です。春号に続いて登場です。すごいですね~。おいしそうな涸沢山荘のソフトクリームと、溶けかけたソフトクリームのような立田のふわふわの美貌で、この本の売り上げは相当上がったものと思われます。

どう見ても爽やかな北アルプスのひとコマです。この立田の頭のなかに、実は屋久島のコケまみれの巨木やら滝やらシカのフンやらゾウムシやらがぎっしりつまっているとは、誰も思いますまい。他に山荘の近くでボルダリングしてる写真も載っています。

立田を抜擢し、ボルダーの背景にこっそり登場しているO編集長の手腕により、ヤマケイJOYは格段の進化を遂げたと思うのですが、Oさんはこの号を最後に次のステップへ進まれるそうです。ひょっとして・・・ヤマケイ本誌の?

2008.05.11

祝「もやしもん」手塚賞受賞

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『もやしもん』が第12回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞しました。愛読者の1人として喜びにたえません。

一次選考では、荒俣宏、香山リカ、萩尾望都、印口(おしぐち)崇、いしかわじゅんの各選考委員が高得点を入れ、ダントツで一位。最終選考では「手塚賞としては小粒」という意見もあったそうですが、まあ菌類マンガですから。 

エコツアーガイドのヒント本としても非常に面白く、私もずいぶんいろいろなアイディアを貰ってます(笑)。臭さ世界1位の発酵食品シュールスト“ロ”ミングや、2位のホン・オフェが、1位、2位とされる根拠などは、かの発酵学者小泉武夫先生の業績の数々に拠っているようで、「もやしもん」を科学的に支える柱のひとつになっているのでしょう。参考⇒「小芙蓉城」。(小泉先生ご自身は「もやしもん」とは距離を置いているように聞きますが。)

ところで作者石川雅之氏の作品に「カタリベ」があります。(本棚のどこかに埋もれてるんですが見つからない) これは倭寇をテーマにした壮大なマンガで、八幡信仰やら女真族やら「ナウシカ」へのオマージュやらが東シナ海を舞台に大暴れしたあげく、収拾がつかなくなったのか、1巻のみで未完になってしまった幻の名作です。

「カタリベ」の執筆続行を心待ちにしているファンはかなりの数に上るだろう、と思うのです。

2007.12.31

山と渓谷2008年1月号

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大特集で『読者1000人に聞く!わが愛する山』とうたい、ヤマケイウェブサイトの特設ページで集められたアンケート(有効回答数1021票)の結果がまとめられている。
ランキング時代らしい趣向だが、これがなかなか面白い。

メイン設問はもちろん「好きな山No.1」である。派生項目の「登ってみたい山」を合わせてベスト5は、穂高、槍、富士山、北岳、剱岳という不動の顔ぶれ。
「登ってみたい山」で北岳と剱岳の順位が入れ替わるが、これは剱岳のほうが困難なのでまだ登っていない人が多いからだろう。

「好きな山」は以下順当に、白馬岳、八ヶ岳、立山、甲斐駒ヶ岳、白山と、ファンの多い中部地方の名山が続く。ところが「登ってみたい山」のほうは6位以下がらりと変わる。

なんと、6位にわが屋久島宮之浦岳(好きな山23位)が堂々ランクインだ。

ついで7位が利尻(好きな山17位)、8位大雪山(好きな山14位)で、ここまでの8座(山は「座」で数えることになっている)がすべて百票以上をかせぎ、それ以下に格差をつけてベスト8を構成している。これに次ぐのは鳥海山、飯豊山で、やはりやや遠めの北日本名山だ。

つまり、ベスト5は問答無用の憧れの大スター、ベスト10は遠くにそびえなかなかたどり着けない憧れの山、である。

深田百名山のひとつで、世界遺産登録でも耳目を集めている知床の主峰羅臼岳は27位(好きな山57位)と、特に注目されているようには見えない。

屋久島が登ってみたい山6位に入ったということは、百名山に入っているとか、世界遺産だから、とかいうこととは少し違う意味合いがあるのかもしれない。たとえば存在感の濃厚さというような…。このへんは考証してみたいものだ。

なおベスト50座の得票数をざっと足してみると2334票になった。アンケート用紙を見ていないのでよくわからないのだが、好きな山を順位つきで2~3座上げてもらい、
1位は3点、2位は2点、というように集計を調整したのだろうか。

アンケート回答者に関する直接データはカットされているが、回答したのは、本誌を購読しヤマケイサイトを「お気に入り」に登録している東京や関西の都市部在住者が中心だろう。これが今の国内登山愛好者の動向を示しているかどうかは不明だ。

むしろアンケート結果から、このアンケートに回答した人たちの姿がしだいに明らかになってくるという読み方ができる。

「好きな山の本はなんですか」という設問。登山という活動は記録文や紀行文を残してナンボというところがあって、昔から活動と出版が連動することが多く、「山岳図書」というジャンルすら存在している。

ところがこの設問の結果は、加藤文太郎、新田次郎、深田久弥、井上靖、植村直巳と、何のことはない私が高校生の頃から古典だったものばかりで、それに最近の山岳漫画が2点が加わっただけだ。このへんの風通しの悪さに、登山の世界の閉塞感を感じないでもない。

まあ他にもいろいろ設問はあり、好きな登山道具などもけっこう面白い。

そして最後の驚きの結果。「好きな登山家はだれですか」。 

5位は岩崎元朗氏。中高年登山者層に勇気と自信を与え、日本の一般登山中興の祖となった存在として順当なランクインであろう。

4位は山野井泰史氏。現代日本最高峰の登攀実績の数々と、クールだが詩情あふれる著作をみればこれまた当然の評価であろう。

3位が加藤文太郎氏。…いまだに人気の続く実力派ストイック登山の教祖、文太郎さんだが、いいのか、それで?

2位が植村直巳氏。植村さんも大自然に向かう衝動というものを体現した金字塔だが、いくらなんでもいまだに2位とは。

では1位は…

1位は野口健氏であった…! 30代以上女性票を一手に集めたもよう。はい、コメントなしです。今年最後のエントリーでした。お疲れさま~。

なお、第2特集「日本山岳風景遺産」の5に、『屋久島のシャクナゲ』が取り上げられていました。撮影は屋久杉自然館館長の日下田紀三さん、黒味岳からシャクナゲ越しに宮之浦岳を望む作品です。

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