大特集で『読者1000人に聞く!わが愛する山』とうたい、ヤマケイウェブサイトの特設ページで集められたアンケート(有効回答数1021票)の結果がまとめられている。
ランキング時代らしい趣向だが、これがなかなか面白い。
メイン設問はもちろん「好きな山No.1」である。派生項目の「登ってみたい山」を合わせてベスト5は、穂高、槍、富士山、北岳、剱岳という不動の顔ぶれ。
「登ってみたい山」で北岳と剱岳の順位が入れ替わるが、これは剱岳のほうが困難なのでまだ登っていない人が多いからだろう。
「好きな山」は以下順当に、白馬岳、八ヶ岳、立山、甲斐駒ヶ岳、白山と、ファンの多い中部地方の名山が続く。ところが「登ってみたい山」のほうは6位以下がらりと変わる。
なんと、6位にわが屋久島宮之浦岳(好きな山23位)が堂々ランクインだ。
ついで7位が利尻(好きな山17位)、8位大雪山(好きな山14位)で、ここまでの8座(山は「座」で数えることになっている)がすべて百票以上をかせぎ、それ以下に格差をつけてベスト8を構成している。これに次ぐのは鳥海山、飯豊山で、やはりやや遠めの北日本名山だ。
つまり、ベスト5は問答無用の憧れの大スター、ベスト10は遠くにそびえなかなかたどり着けない憧れの山、である。
深田百名山のひとつで、世界遺産登録でも耳目を集めている知床の主峰羅臼岳は27位(好きな山57位)と、特に注目されているようには見えない。
屋久島が登ってみたい山6位に入ったということは、百名山に入っているとか、世界遺産だから、とかいうこととは少し違う意味合いがあるのかもしれない。たとえば存在感の濃厚さというような…。このへんは考証してみたいものだ。
なおベスト50座の得票数をざっと足してみると2334票になった。アンケート用紙を見ていないのでよくわからないのだが、好きな山を順位つきで2~3座上げてもらい、
1位は3点、2位は2点、というように集計を調整したのだろうか。
アンケート回答者に関する直接データはカットされているが、回答したのは、本誌を購読しヤマケイサイトを「お気に入り」に登録している東京や関西の都市部在住者が中心だろう。これが今の国内登山愛好者の動向を示しているかどうかは不明だ。
むしろアンケート結果から、このアンケートに回答した人たちの姿がしだいに明らかになってくるという読み方ができる。
「好きな山の本はなんですか」という設問。登山という活動は記録文や紀行文を残してナンボというところがあって、昔から活動と出版が連動することが多く、「山岳図書」というジャンルすら存在している。
ところがこの設問の結果は、加藤文太郎、新田次郎、深田久弥、井上靖、植村直巳と、何のことはない私が高校生の頃から古典だったものばかりで、それに最近の山岳漫画が2点が加わっただけだ。このへんの風通しの悪さに、登山の世界の閉塞感を感じないでもない。
まあ他にもいろいろ設問はあり、好きな登山道具などもけっこう面白い。
そして最後の驚きの結果。「好きな登山家はだれですか」。
5位は岩崎元朗氏。中高年登山者層に勇気と自信を与え、日本の一般登山中興の祖となった存在として順当なランクインであろう。
4位は山野井泰史氏。現代日本最高峰の登攀実績の数々と、クールだが詩情あふれる著作をみればこれまた当然の評価であろう。
3位が加藤文太郎氏。…いまだに人気の続く実力派ストイック登山の教祖、文太郎さんだが、いいのか、それで?
2位が植村直巳氏。植村さんも大自然に向かう衝動というものを体現した金字塔だが、いくらなんでもいまだに2位とは。
では1位は…
1位は野口健氏であった…! 30代以上女性票を一手に集めたもよう。はい、コメントなしです。今年最後のエントリーでした。お疲れさま~。
なお、第2特集「日本山岳風景遺産」の5に、『屋久島のシャクナゲ』が取り上げられていました。撮影は屋久杉自然館館長の日下田紀三さん、黒味岳からシャクナゲ越しに宮之浦岳を望む作品です。
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