◎屋久島『協力金』問題

2010.02.15

縄文杉、むりやり事実上の有料化へ ・・・あ~あ

先ほどの町防災無線。

「環境政策課からお知らせです。3月から11月まで、荒川登山口において、募金活動、各種情報の発信・収集を行う業務員を募集します・・・」

あ~あ。

ついにやっちゃったよ。

3月から縄文杉荒川登山口のシャトルバス運行が決まっていた。登山口の休憩所も次第に出来つつあった。ここに管理人を置いて、「山岳部保全募金」を要求しようというわけだ。

事実上の縄文杉登山有料化である。

町の環境政策課はこれに反対して、推進しようとしている鹿児島県を抑えに回っているようなことを言っていたが、結局こういうことか。

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2008.12.06

「屋久島入山料」強制徴収を知事発言 2008.12.3.

鹿児島県伊藤知事の屋久島「入山料」に関する発言が新聞等で報道されました。(南日本新聞と朝日新聞鹿児島版の記事全文をこのページの後半に引用してあります。)

記事に引用されている箇所に間違いがなければ、「保全募金が思うように集まらないので強制的に徴収したい、利用者の理解は得られる」 という主旨です。

ただ二牟礼県議は「入島税」について訊いているのに、知事は「入山者に負担」いただく、という回答をしており、微妙にずれがあるようです。

それはともかく、発言の全文はまだ公開されていないため詳細はわかりませんが、とりあえずコメントしておきます。

①屋久島利用者から保全募金が730万円も集まったことに対して、県としてまず感謝の気持ちを表明すべきではないのか

(もし知事がその旨発言されていたのなら、お詫びのうえ訂正しますが)

目標額4000万というのは県の胸算用であって、募金をしてくださった屋久島訪問客の皆さんには関係の無いことです。これはあまりにも無礼ではないか。

YNACも微力ながら大多数のお客さんに募金への協力をお願いし、少なくは無い金額を事務局へ届けています。県にこんなことを言われては、募金をしてくださったみなさんに合わせる顔がありません。

②利用者の理解は得られる、というが、利用者からはすでに白谷・ヤクスギランドの入山協力金が年間4000~5000万円も徴収されており、これは実質林野庁に権限を残しながら一応屋久島町長が会長を勤める「屋久島レクリエーションの森保護管理協議会」が受け皿になっています。

今回の「入山料」もおそらく屋久島町が受け皿に想定されていると思われますが、林野庁系の「協力金」を料金のような顔をして事実上徴収しておるのに、それは「見ないようにして」別の料金の徴収も「理解を得られる」というのははたしていかがなものか?

1人にでも聞いてみればわかりますが、利用者は屋久島のために協力金を出してくださるのであって、林野庁に寄付しようとか県にプレゼントしようとか思っているわけではありません。①のことといい、「利用者の視点」というものが欠けているのではないでしょうか。

③屋久島の場合自然資源の管理は環境省、林野庁、屋久島町、集落などが複雑に絡み合っています。林野庁のこれまでの仕事が典型的ですが、それらがてんでに管理費用を集めようとするために、せっかくのお金が徴収業務そのものに費やされてしまうため、かなり無駄になっています。

白谷・ヤクスギランドでは、集まった4472万円(平成17年度)の全額が平18年度に消化されました。そのうち実際に施設管理・整備のための予算として消化されたのは1140万円にすぎません。残りの3288万円は、受付人件費とパンフ・チケット印刷費用に消えています。

また、この「協力金」は任意のものなので、徴収人を置いてあたかも「料金」であるかのような顔をして金を取る、といって悪ければ、徴収人を置いて利用者にプレッシャーを与えて金を取る、という手法が使われているわけですが、これは果たしてフェアなやり方でしょうか?

しっかりと責任を持って入島料ないし入山料を徴収し、屋久島を何とかしてゆく、ということになれば、もはやそのようないいかげんな体制ではどうにもなりません。

この期に及んで受益者負担に反対するわけではありませんが、集まった資金を最大限有効に活用するためには、たとえば「屋久島自然管理局」というような実際的な機能と権限を持った主体が必要になるのではないでしょうか。1人の屋久島好きとしては、しっかり現場のことがわかった司令塔が欲しいと思います。

⇒県に提出した募金に関するパブリックコメント

⇒林野庁に対する批判

⇒悲惨な状況の

⇒利用のあり方の問題点

以下南日本新聞・朝日新聞鹿児島版の記事全文を引用~~~~

2008年12月4日(木) 南日本新聞(1面)
屋久島入山料導入へ トイレ募金低調 環境保全目的に 伊藤知事表明

 鹿児島県の伊藤祐一郎知事は三日、屋久島の登山者から環境保全目的で入山料を徴収する考えを明らかにした。制度の詳細や導入時期などは、今後、屋久島町など関係機関の意見も聞きながら調整する。県議会代表質問でも答弁。(22面に関連記事)
 山岳部トイレからし尿を人力搬出するため、屋久島山岳部利用対策協議会(事務局・県環境保護課)が四月から実施している「トイレ募金」への募金が低調で、目標額を大きく下回っているため。
 県民連合の二牟礼正博県議から「入島税」導入の考えを聞かれた伊藤知事は、税という言葉は使わなかったものの、「自然環境保全にかかる経費の確保について、入山者に負担をいただいても理解は得られる。一定の強制力で確実に協力が得られる仕組みを今後構築したい」と応えた。
 県環境保護課によると、トイレ募金は年間四千万円を目標にしていたが、10月末現在で約730万円にとどまっている。
 県は2000‐03年、法定外目的税の1つとして、入島税や入山料の可能性をさぐったが、「課税対象の把握公平性の観点から創設は無理」と結論付けた。しかし、最近は登山者が増えたことや環境への意識の高まりから、再検討する価値があると判断した。

2008年12月4日(木) 南日本新聞(22面)
屋久島入山料 協力金と整合性課題 県、92年から議論重ねる

 屋久島山岳部への入山者に課金する発想は、鹿児島県が1992年に公表した「環境文化村構想」の中で「環境キップ」として議論が始まった。伊藤祐一郎知事が3日、徴収の考えを示した入山料は、既存の協力金や入山許可との整合性など、整理すべき課題が残る。(一面参照)
 環境キップは世界自然遺産登録を目指す際、保護ゾーンと位置づけた山岳部への観光客入り込みをコントロールする入山規制策として浮上した。
 世界遺産には1993年登録。観光客増加で登山道の荒廃が進み、島に持ち込まれるごみやし尿の処理費がかさんだ。環境保全費用捻出のため、観光客にも負担してもらおうと、入山料や入島税の形でも論議が重ねられたが、実現には至っていない。
 島内では現在、林野庁が指定する自然休養林2ヵ所で協力金300円を徴収しており、二重取りの指摘もある。また林野庁が狩猟者に与えている入山許可との整合性や規制の根拠となる法律など、観光業者らへの越名責任が求められる。
 規制を伴わない入山料の一律徴収は、登山者数抑制で自然環境への負荷を小さくするという、当初の目的からは外れることになる。

2008年12月4日(木) 朝日新聞(鹿児島版31面)
屋久島に「入島税」 環境保全に県検討

 屋久島の入山者のし尿埋設処理が自然環境に悪影響を与えている問題で、伊藤祐一郎知事は3日、県議会12月定例会で「一定の強制力を持って、確実に一定の協力を得られる仕組みを構築することが世界自然遺産の島・屋久島の自然環境を守るためには必要」と述べ、入島税や入山料の導入に向けて検討を進める考えを明らかにした。
 県民連合の二牟礼昌弘県議の代表質問に答えた。伊藤知事は「し尿処理を含めた自然環境保全にかかる経費の確保について、入山者から一定のご負担をいただくことは入山者からのご理解を得られる」との見解を示した。
 今年4月、登山者用トイレにたまったし尿の搬出費にあてる「トイレ募金」を解説。県環境保護課によると、登山のピーク期を過ぎた11月5日時点で729万円と、目標を大幅に下回っている。
 飛行機や船の運賃に上乗せする入島税は沖縄県の伊是名村と伊平屋村の2例があるが、島民にも負担を強いている。入山料も徴収にかかる人件費の課題があるという。

引用以上~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

大まかな感想を述べると、南日本は「金の徴収は屋久島入り込みへ制限をかけるためのもののはずなのに、主旨が違ってきている」という論旨、朝日は短い記事ながら「登山者がし尿で汚すのでけしからんから・・・」というニュアンス。

新聞記事に記者のバイアスがかかることはあるだろうとは思いますが、基本的に両記事ともいまいちです。

特に朝日の「屋久島の入山者のし尿埋設処理が自然環境に悪影響を与えている問題」という表現は、入山者がし尿を埋設するから自然に悪影響が出る、という意味に誤解される危険があります。

登山者は管理者の指示どおりトイレを利用しているのであって、埋設処理に失敗しているのは管理者の責任です。縄文杉や宮之浦岳登山者の増加についてはもう15年も前から指摘されているのに、埋設が問題になっている小屋のトイレはその頃のままなのですから、トイレの破綻を登山者のせいにするのは、関係者の言い逃れにすぎませんし、そのことをもって利用者を非難する筋合いでもありません。

2008.04.18

白谷で募金視察団と出会う

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白谷に行くと、たまたま募金の視察団の皆さんがいてびっくりです。

鹿児島県、屋久島環境文化財団、屋久島町、林野庁の各担当者がそろってます。環境省の知ってる方はいませんでした。

すごいですね。この人たちがここで合意してしまえば、募金もなにも全部いい方へ決まってしまうという顔ぶれです。

いい機会だったので、ご挨拶して、われわれ最前線で募金の呼びかけに関わる立場のことなど少し申し上げましたが、写真で見ると、なんか視線をそらしっぱなしの方もいらしたようですね(笑)。

2008.04.12

白谷の募金箱

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ヤクスギランドにはなにもありませんでしたが、白谷には募金箱がおいてありました。徴収人のノーコメントは同じでしたけど。

透明なアクリル製なので2~3千円入っているのがわかります。500円なら6人分くらいか(笑)。

まあ、協力金の300円と、保全募金の500円を比べれば、募金のほうが無駄なく使われるのはまちがいありませんが・・・。

しかし、お金を集めるといくことは、本当に筋が通っていて、集める方にも自信がないと難しいものですね。

善意の強要はうっとうしいし、しょぼいのも情けないです。

2008.04.09

「協力金」と「募金」について

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ヤクスギランドの入口です。ここの協力金は平成18年度に4873万円という収益を上げ、同額が19年度にヤクスギランドと白谷雲水峡の「整備」のために使われました。

17年度の支出実績では(18年度の実績はまだ発表されていない)、徴収業務等のための人件費が2438万円ほど、リーフレット・チケット印刷等に850万円ほどが使われており、19年度も同額が使われたとすると、協力金の実に67%が、お金を受け取るために使われたことになります。

ついでに紹介しておくと、ヤクスギランドや白谷で一番多いゴミがこれです↓。

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850万でパンフ、チケットの他に、この頃はシールまで作って配っていたようです。

利用者がゴミを捨てる、というより、いつのまにか手からすべり落ちてしまうんですね。これ。高さのある階段のすきまなんかに落としてしまうと、拾うのは無理でしょう。

この協力金の面白いところは、あくまで寄付金のような建前であるにもかかわらず、目標額が設定されていない、という点です。

かつ、すべて当地のために使う、という取り決めがあることにより、集まったお金は全額次の年度に使い切る、という慣行があるのです。これは本来は屋久島以外には持ち出さないという地元からの要望を受けたものだったはずなのですが、現在はそれがヤクスギランドと白谷以外には出さない、という意味になっています。

要するに、ランド、白谷で集められた協力金の2/3は、お金を徴収するために使われており、それ以外は集まったら集まっただけ、次の年度に全部つかってしまう、というシロモノです。

さて、このランド・白谷入口でも、このたびの「山岳部保全募金」の収受を合わせて行うということで、はたしてどういうことになっているか、興味深く見に行きました。ところが、↑冒頭の写真のとおり、どこにも看板も募金箱も見あたりません。でもよーく見ると・・・

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ありました。入口横のガラス戸に、小さなチラシが張られています。でもあまりに小さくて、かたわらを通り過ぎる際に読めるものではありません。

係の人は、普通どおりに協力金をとるだけで、この募金についてはノーコメントでした。どういう取り決めになっているのかわかりませんが、林野側に、この募金を屋久島のためにお願いしようという気はなさそうです。

いいんですかね。こんなことで。

どちらかというと、ヤクスギランドと白谷雲水峡に全部費やされる協力金と、これから屋久島全体に使われてゆくべき(これはまだ私見なんですけど)募金と、両方に、あるいはどちらか好きな方だけに、選んでお金を出せるようにするべきなのではないでしょうか。二つ募金箱を置けばいいのでは。

だいたい寄付をお願いします、という話なのだから、ダメで元々、誠実に透明に計画を説明して、もし拠出していただけるのならありがたいです、くらいの姿勢を保ってもらいたいものです。よい観光地を作りたいなら、訪問客の皆さんに不愉快な思いをさせてはいけない、なんてことはイロハのイであります。

ただ、この「協力金」19年度からは、林野庁の直轄管理ではなく 「屋久島レクリエーションの森保護管理協議会」が担当することになりました。

屋久島自然休養林の管理運営体制の見直し
~地域のアイディアと活力を活かした質の向上と自立への一歩~

とプレスリリースのタイトルにあるように、これまでのような林野庁が協力金を握って離さない、という姿勢を改め、「地域の自立」ということをうたうようになったのです。

これは素直に聞けば、驚くべき方向転換です。

「屋久島レクリエーションの森保護管理協議会」の構成メンバーは、屋久島町、観光協会商工会、交通関係団体等で、事務担当は屋久島町です。

保全募金も町、自然休養林の協力金も町が管理するのなら、これはもはや分けて考える必要性はなく、本来の環境キップ的な屋久島全体の整備管理予算にまとめて行くのが望ましい方向ではないでしょうか。

白谷とランドの協力金は、この保全募金にまとめてしまって、入島時に皆さんに500円の協力をお願いし、あとは島内どこでも気持ちよく利用してもらう、ということで、方向性はきれいに決まるのではないかと思います。

『屋久島山岳部保全募金』の状況

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屋久島山岳部保全募金が始まっています。これは協力者にくれるステッカーです。(でも、これをどこに張ればいいんだろう。)

お客さんのAさんと訪れた淀川登山口に、看板が出ていました。ポール部分が募金箱になっており、その左サイドを見ると・・・

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こんな風に書いてあり、裏側に・・・

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ステッカーが用意してありました。全体的には微笑ましい雰囲気です。で、看板の本体は、これです。

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文面からも、いかにも自信無げな様子が読み取れます。降りしきる雨の中、これでお金が集まるかと言うと、率直に言って厳しいかも。

屋久島の観光施設の管理に管理費が必要なのはもはや明らかですから、いかに前向きに予算を集めてゆくかは重要な問題です。でもこの文面には、あいも変わらず「登山者が増えたせいでトイレが大変なのだから募金してください」というニュアンスが感じられ、観光客害悪論から抜け出ているようには思えません。

これでもし、お金の集まりが悪ければ、切れて「観光客の意識が低い!けしからん!」 などと叫びだす勘違い者がでてきそうです。

モ 「結局、行政機関がそれぞれ権利意識過剰で、一旦利権を握ったら離そうとしないんですよ。」

A 「う~ん、結局、そのお金がどう使われるのかなんですけどね。」

モ 「金額はどうです?高くない?」

A 「本当に必要だというのなら、そのくらいは出してもいいけど。でも使い道とか、節約して大事に使ってくれてるかとか、そういうことが明朗会計に(笑)してもらえるのかどうかが気になりますねー。」

モ 「林野庁がヤクスギランドで協力金を取り出したもんだから、そういうことならウチもやったっていいじゃないか、といって、あっちでもこっちでもまねし始めたんです。」

A 「なんかやだ。」

モ 「屋久島全体の施設管理費を少しずつ負担してくださいといって、空港や港で集めようというアイディアはあるんですけどね。環境キップとか入島協力金とか言う形で」

A 「まあ、利用者としては、そのほうがすっきりするかな。明朗会計なら(笑)」

モ 「目標金額も明示して・・・」

A 「え?、目標金額がないんですか? 募金なのに?」

モ 「はい、その・・・あった方がいいですよね。」

A 「それはそうですよ」

お客さんのAさんとの淀川における会話を、私が1/4ほどアレンジして再現してみました。こんな感じが普通の反応かなと思います。

もう屋久島町が責任機関として立ったのですから、この保全募金を、「屋久島保全基金」として、トイレの担ぎ下ろしとかだけではなく、はっきりと全体の管理に向けてゆくべきだと思います。

繰り返しますが、観光客害悪論はもうきっぱり捨て去るべきです。地元の責任として、訪問客の皆さんに、「この屋久島をともにしっかり守ってゆきましょう、ぜひ協力してください」と、明快に訴え、自然観光を地域経済の柱として、よりよいものに育てて行くべきです。

世界遺産には、保護だけではなく、教育という目的が明確にうちだされています。屋久島を訪れた訪問客が、ここで本物の自然を体験し、そこから多くのことを学べる仕組みを作り上げることが、これからの屋久島の取るべき進路だと思います。

2008.03.31

屋久島山岳部保全募金が始まります

屋久島町環境政策課の塚田英和課長から、観光協会を経由して下記のようなメールが回りました。

平成20年3月27日

(社)屋久島観光協会ガイド部会の皆様

屋久島町環境政策課長


屋久島山岳部保全募金についてのお知らせとお願い


 新聞報道等でご承知のことと思いますが、本年4月1日より山岳部避難小屋に付随するトイレのし尿搬出を、人力で実施することにいたしております。この事業は、屋久島山岳部利用対策協議会が行うことになっていますが、実質的には屋久島町が実施する事業となります。
し尿搬出にかかる経費については、一口500円の寄付を募り、その費用に当てることになっています。この募金は全額、屋久島町の収入となります。
 山岳部のトイレについては、これまで臭気や汚いなどの苦情が多数寄せられており、その対策の一環として遅ればせながら上記取り組みを実施することにいたしました。また、これまで現地埋設処理されていたし尿が生態系や水環境に与える負荷の軽減にもなります。
 この募金制度については、皆様方にもいろいろとご意見があると思いますので、ご提言やご意見を常時お聞きして、より良い方向で屋久島の自然環境が保全されるよう対策を実施してまいる所存です。
 ついてはこの募金制度が機能するためには、皆様方の協力が不可欠だと考えておりまして、ガイドの皆様に次の2点をお願いするしだいです。

① 山岳部をエコツアーなど日常的に利用される方には、年間3000円程度の募金をお願いしたいと考えております。もちろん強制するものではありません。募金に協力いただいた方には、それを証明するものを屋久島町が発行いたします。

② 主催するツアー参加者に募金の趣旨説明と協力の呼びかけをお願いいたします。

 以上ですが、皆様方のご理解とご協力により、屋久島の山岳部の保全は無論のこと、持続可能な環境観光の島、屋久島を今後とも共に追求してまいりたいと考えております。何卒、よろしくお願い申し上げます。

以上

  

  

この募金についてまとまった紹介は現在どこにも公開されていません。言いだしっぺだったはずの鹿児島県は、募金に関するページをいつの間にか削除してしまいました。あのパブリックコメントははたしてどうなったのでしょうか?

行政機関がてんでに徴収人を置いて、あっちでもこっちでも「協力金」とやらを取る、という最悪の事態はなんとか回避され、今後屋久島町が集約するかたちでこの「募金」が動いてゆくことになるでしょう。

ヤクスギランドと白谷の放漫な「協力金」もこの募金に併合するとかして、なんとか整理したいものです。(そういえば林野庁森林管理署が新庁舎をこのあいだお披露目してましたが、あんな予算がいったいどこから出るんだろう?)

本来任意の募金や協力金といったものは、「お願いする筋あいではないのだが、まげて屋久島のために協力をお願いする」という姿勢であるべきものであります。私はこの「募金」を今某所で見られる、人の善意につけ込んで協力を強要するような卑しいものにはしたくありません。

この「募金」に関してご意見をお持ちの方はぜひ屋久島町の環境政策課塚田課長にメールで連絡してください。

この件について私も論評をまとめようとしているのですが、なかなかまとまりません。とりあえず以前のパブコメです。

2008.02.17

トイレ募金に対するパブリックコメント

屋久島山岳部保全募金 及び 

山岳部トイレ管理事業実施(案) に対する意見(パブリックコメント)

市川聡 小原比呂志 (連名)

1.現状認識と、事業の趣旨について

◎ヤクスギランドや白谷雲水峡、永田浜では、入口段階で半ば強制的に協力金を徴収するという体制が取られている。しかし協力金は、屋久島文化村財団10周年シンポジウムで横浜国立大学の加藤教授(協力金問題の専門家)が述べておられたように、本来は出口で、お客様が実際に管理体制や保全の実態を見てきた上で、その主旨をよく考え協力するかどうかを判断すべきものである。

◎「管理にお金がかかるのであるから利用者が協力するのは当然であり、協力しないものは不心得者だ」 という考えは、協力金の主旨とは合致しない。それであれば入園料、ないし入園税として徴収すべきである。協力金という体制を取る以上は、あくまでお客様の善意に働きかけて協力を呼びかけるのが本来のあり方である。

◎協力金を効率よく収集することに主眼をおいた入口での徴収方法は、善意の強制であり、実際に入園後にヤクスギランド等で最も目立つゴミが、入口で協力金の支払いと引き替えに手渡される協力金の領収書であること等を考えると、本末転倒、環境保全を語った「たかり」とも受け取られかねない危険性を孕んでいる。

◎従って既存の協力金は利用者に対してとうてい胸を張って拠出をお願いできるようなものではない。今回の保全募金とその運用に関して、島内観光業者としては、お客様が自ら判断し気持ちよく協力金を払いたくなるような優れた徴収体制の構築を求めたい。もしフェアなものでなければ、訪問客のよりよい屋久島体験に責任のある観光業者として、協力するわけには行かない。

◎世界遺産屋久島の魅力は多くの人を強く惹きつけているが、一方で一般には経済活動に不利となるはずの離島としての立地条件が、逆に観光利用をコントロールしやすいという利点になっている。しばしば耳にする「登山者が集中し・・・観光客が押し寄せて自然環境への影響が懸念されて」云々とは、あきらかに利用者に責任があるとする物言いである。手をこまねいて事態を悪化させてしまったことへの責任逃れにしか聞こえず、募金を通じてご協力をいただこうという姿勢とはいえない。まずもって国の責任、県の責任、町の責任、島民の責任を明らかにし、その上で利用者に協力を求めるべきである。

◎世界遺産に登録されて15年も経っているのだが、その間行政は山岳部トイレの改善に関して、いったいなにをしていたのか。いまだに「登山者が集中し・・・観光客が押し寄せて自然環境への影響が懸念されて」などと書かれているが、対策が遅れた言い訳にもならない。観光客を仮想敵とし、自然破壊の責任を押し付けるような理由付けは無責任であり、屋久島来島者に対して失礼である。(案)文面から削除するべきだ。

◎観光業はこれからの屋久島の基幹産業のひとつであり、世界遺産の名にふさわしい保護・利用・教育のバランスの取れた健全なものに成長・成熟させなければならない。環境・観光行政の根底には、まずこの見解を置くべきである。そのうえで、資金難のおり、屋久島を愛する利用者とともに屋久島の自然環境を守ってゆきたい、という姿勢をとるべきである。

2.実施主体について

◎地元行政として合併した屋久島町が執行機関となることは筋が通っており、賛成できる。但し受益者負担として協力金を徴収する以上、地元町が観光客が来訪することによる最大の受益者であることを忘れてはならない。

 ◎今後鹿児島県から環境省直営に移行する登山施設の管理の、地元自治体引き受け分の財源としてこの募金を活用してゆくとのことだが、これはまさに当初からうたわれていた『環境キップ』の理念に近いもので、納得できる。これを機会に既存の他の協力金と統合を図り、一元的な世界遺産管理に役立てていただきたい。 

3.事業の概要について

◎今後トイレをバイオトイレなど分解型の搬出コストのかからないものにしてゆくべきなので、募金の用途を避難小屋汲み取りトイレの搬出用にのみ限定する必要はない。登山道整備等、利用施設全般の管理に使える基金とすべきである。

◎ヤクスギランドと白谷雲水峡で募金500円を募る上に、現行の協力金300円まで募るのは、合計800円となり高すぎる。自然休養林の管理協力金も町が主体である美化協議会が主体となっているのだから、今回の山岳保全募金に含めて、白谷とヤクスギランドの管理費も、必要な金額だけを基金から拠出するようにすべきである。利用者の立場に立てばそれが自然な感覚である。絶対に現状の延長で強制的に取るべきではない。

◎人力搬出に関してはあくまで臨時のものとすべきで、基本的にはヘリ搬出をするべきである。

やむを得ず人力搬出をする場合は、高塚小屋、新高塚小屋に関しては混雑する大株歩道を下ろすと利用者の迷惑になるので、白谷17支線管理歩道を使うべきである。

◎このような受益者負担の募金は屋久島訪問客に広く薄く求めるべきで、山岳地の利用者に限定して取り立てるような形ではなく、空港や港など、どこか一箇所で環境キップを購入できるようにして、そのキップを持っていれば白谷雲水峡でもランドでも入場が無料になるようなものとしてゆかなければならない。繰り返しになるが、白谷雲水峡とヤクスギランドの協力金やウミガメ観察協力金等は将来廃止して、環境キップに一本化するべきである。

◎「どこにいっても金を要求される。世界遺産をかさにきて金に卑しい島である」

このような評判が定着することは絶対に防がなければならない。そのためには、募金の主旨、目標金額、使途を明示し、目標に達したら募金を打ち切るくらいの明朗性を維持しなければならない。本来公共施設の維持管理は管理者である公共機関の責任において予算化し行われるのが筋であり、協力金や寄付金などを任意でつのり資金源とするようなものではない。

◎集まった浄財の使途について詳細を公表するのは当然のことである。裏を返せば島内で他に集金されている一部の「協力金」なるものに、あまりにもドンブリ勘定でその正当性を信頼していいのかどうか不明なものがあるということで、これはまことに遺憾なことだが、今回の募金はこのような不信感を一掃するものでなくてはならない。

2007.11.29

『協力金』問題再燃か 2

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ヤクシマオナガカエデの紅葉 (ヤクスギランド線alt.370m付近)

鹿児島県環境保護課の谷口課長補佐から連絡があり、昨日11月27日研修センターで「屋久島山岳部保全募金及びトイレ管理事業」に関する意見交換を複数名でしてきました。

いまその結果をまとめていますが、やはりかなり問題ありです。

県環境保護課の方針としては、トイレ問題は緊急課題なので、将来の本格的な管理改善事業が広く薄く求める始まるまでの暫定的なやり方として、この事業を行いたい、いろいろ不十分な点はあるが、事業のやり方については今後パブリックコメントを求めたい、ということでした。

そのやり方の原案がまったくぼろぼろといっていい状態で、こちら側も遠慮なくツッコミまくったのですが、そのなかで一番の問題点は、この人肩搬出もくだんの協力金徴収も将来の本格的な改善までの一時的な管理事業だ、とうたっていながら、将来への道筋がなにも検討されていないことでした。

つまり、暫定的にとりあえず、ということになってはいるのですが、この計画をこのまま進めるとおそらく現状のまま固定化され、本格的な将来どころかもっと悪くなった形で、各役所ごとに利権を握って離さず、屋久島全体の自然管理が硬直してしまうという事態になる危険が高いと思われます。

また、白谷とヤクスギランドの協力金については、林野庁の「既得権」だと関係機関は思っているようで、どうにも歯切れが悪い話になるようです。

しかし白谷とヤクスギランドの協力金は林野庁の既得権だなどと思っている利用者が、はたしてどれほどいるでしょうか?

環境保護課としては、関係行政機関のおよそ7割からOKをもらえればこの計画は進めてよいと考えている、とのことでした。

しかしこの話は利用者の合意こそ得るべきことであって、来島者を財源と見なしている というのなら、来島者が理解しやすい計画でなければ話になりません。これはネットやメディアを使うなどして、もっと広く論議すべきだと考えている、ということを伝えておきました。 

ひとつ付け加えておくと、現状だと協力金の徴収には、徴収自体に協力金収入の6~7割が食われます。全体が200円なのに荒川登山口だけなぜ500円なのかというと、まあ大雑把な話ではありますが、徴収人を置くために差額の300円をいただく、ということのようです。

こういう協力金、払えますか?

(この話続く)

2007.11.26

『協力金』問題再燃か

しばらく静かだった『協力金』問題ですが、動きがありました。

過日行われた屋久島山岳部利用対策協議会において、鹿児島県環境課から次のような提案があったようです。

  • 淀川、新高塚、高塚、石塚、鹿之沢、白谷の各小屋のトイレの管理財源として島内5ヶ所で「管理募金」を徴収したい。額面は下記の通り。
  • 荒川登山口: 500円
  • 白谷雲水峡・ヤクスギランド: 現行の林野庁協力金の他にそれぞれ200円
  • 環境文化村センター・屋久杉自然館: 入館料の他にそれぞれ200円

とのことです。

なんとも妙な金額の差です。

白谷とヤクスギランドの200円というのは、林野庁があくまでも現行の協力金を固持するので、林野庁が納得するようにあわせて500円としたい、ということでしょう。文化村センターと自然館の200円というのは、入館料が500円に600円とそれなりに高いので、お安くしておきますか、というところでしょうか。

徴収方法については明らかでありませんが、荒川以外は受付があるので委託しよう、荒川には徴集人を置こうということでしょうか?

ちなみに荒川縄文杉ルートの荒川登山口トイレと大株歩道トイレに関しては、管理対象に入っていません。

さて、問題点がどこにあるのか。

まず、トイレの利用者と「募金」される人がまったく違います。荒川口から縄文杉に登る人は高塚のトイレなど使わないし、ヤクスギランドを歩く人も淀川小屋のトイレなどまず使いません。

あるトイレが有料になるというのなら、そのことに対する是非の判断は別として、一応受益者負担という筋はとおっています。しかしこの案では、あるところにたまたま来た人が、他の関係ないトイレための管理費を要求されることになります。これは受益者負担ですらありません。なぜこのような案を思いつけるのか、不思議なくらいです。

トイレ利用者以外の観光客にも屋久島全体のための負担をお願いするのだ、というのであれば、だれもが通過する空港や港などで広く浅くお願いするのが筋ではないでしょうか。それなら鹿児島県の当初の案どおり、環境キップ制度を導入すべきです。

管理対象に新しく白谷山荘のトイレも入っているのが目に付きます。しかし現在このトイレはすでに林野庁が人肩搬出を行っています。この事業は潤沢な白谷+ヤクスギランド協力金でまかなっているということで筋は一応通っている。これを200円実質値上げしなければならない理由はなんなのか。

観光協会は、以前この協議会で縦割り行政の弊害を指摘し、環境キップ制度/入島税の推進をうたったはずなのですが、林野庁や鹿児島県側はまったく意に介していないのかなんなのか、前回から何の進歩もない案を出してきました。

観光協会もなめられたものですが、このときの協議会では、先の判断のとおり、このような縦割り徴収には賛成できないということで、突っぱねたもようです。

こんなことを許したら、屋久島はどこへ行っても金をむしられる、タカリの島になってしまいます。

本来国の施設は国が責任を持って管理すべきなのです。受益者負担をお願いしたいというのなら、きちんといくら必要なのかを算出し、公平で利用者の負担がなるべく少ない方法を探るのが当然です。

人の多いところでたかってまわるような鹿児島県の案はどう考えてもおかしいし、現行の「協力金」を握って離そうとしない林野庁の姿勢はもっとおかしいように思われます。

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